生物と無関係に外に存在する世界ではなく、生物が自己を投影した形での世界のことで、これが生物の生きる環境となるというもの。ドイツの理論生物学者ユクスキュルが1900年ごろに提唱した考え方。アフォーダンスとは環境についての理解が異なる。
日本語の「環境」は、英語では"environment"(包み込むもの)、ドイツ語では"Umgebung"(周囲に与えられたもの)である。環境とは一般的には主体とは別に客観的に存在するものと考えられている。しかし、ユクスキュルはこれを"Umwelt"(環世界)とよんで、主体が積極的につくりだすものだという立場をとっている。なお、ユクスキュルから影響を受けたハイデッガーも、Umweltという語を用いている。
環世界は、たとえばヤドカリがイソギンチャクに出会った場合に、自らの状態(殻なし、殻だけあり、殻にカモフラージュあり)に応じて3通りの反応をすることから説明できる。殻なしの場合はイソギンチャクに入り込み殻とする。殻ありの場合はイソギンチャクをカモフラージュに使う。カモフラージュがすでにある場合は食料とみなして食べるというものである。つまりそのときのヤドカリの気分によって、ヤドカリの視野にある同じ円筒形の対象物の意味が変わるのである。
[中島秀之 2019年8月20日]
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