純粋にコウゾだけの原料ですかれている紙をいう。雁皮紙(がんぴし)や三椏紙(みつまたがみ)の場合も生漉紙と呼びうるはずだが,実際には楮紙(こうぞがみ)で使う場合が多い。それは,楮紙の使用量が圧倒的に多く,種類も豊富であること,とかく楮紙には木材パルプなどが混入される場合が多かったため,純コウゾであることを強調する必要があったことなどが,理由である。
なお類似の名称として〈生紙(きがみ)〉があるが,これは仕上がったままの状態で,なんの加工も施されていない紙をいう。生紙に対照する紙名として〈熟紙〉があるが,これは生紙を槌や杵でたたいたり(打紙(うちがみ)),角などで磨いたり(瑩紙(えいし))して,平滑な紙肌にし,書きやすく加工した紙をいう。まだ筆で書きづらい粗紙が多かった古代に用いられた紙名である。この種の技術は中国で唐代に高度に発達した。なお,平安時代の《枕草子》などに出てくる〈素紙〉は高い評価を得ているが,これは普通の紙という意味ではなく,熟紙の加工をしていない,コウゾを原料とした生紙をさしていると思われる。すでに生紙の状態のままで十分に筆がはしり,生地のままの状態のほうが紙がより美しいと認められていたわけで,和紙の技術の発展を示している。
執筆者:柳橋 真
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