関孝和によってまとめられた代数の書。1674年(延宝2)刊。天元術を初めて解説したのは沢口一之の《古今算法記》(1671)で,沢口は天元術では解けない問題15問をこの書の巻末に遺題として提出した。関孝和は算木を使う方法をやめて,紙に文字係数の連立多元高次方程式を書き表す方法をくふうし,それを使って,沢口の遺題の解答法を示したのが本書である。関はこの書の中で,未知数を消去して,一元高次方程式に整頓する方法を示した。この書により関の名は広く知られるようになった。本書は刊行後すぐに版元が火災にあって版木が燃えてしまい,また一部の数学者が関の方法が理解できず関を非難したため,関の弟子の建部賢弘はこの書を詳しく解説した《発微算法演段諺解》(1685)を刊行,これによって関の方法,すなわち演段法が理解されるようになった。
執筆者:下平 和夫
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
関孝和(たかかず)の著した数学書。1674年(延宝2)刊。沢口一之(かずゆき)の「古今算法記」(1671)には天元術が解説されているが,器具代数の天元術では,数係数の連立多元1次方程式か数係数の高次方程式しか解けない。そのため「古今算法記」にある遺題15問は天元術では解けず,関は自分が工夫した傍書法を駆使し,文字係数の多元高次方程式を処理する演段術を使ってこの遺題を解き,その解法を本書で示した。「関孝和全集」所収。
出典 山川出版社「山川 日本史小辞典 改訂新版」山川 日本史小辞典 改訂新版について 情報
出典 旺文社日本史事典 三訂版旺文社日本史事典 三訂版について 情報
…和算を高等数学にまで程度を高めた関孝和も,礒村吉徳の《算法闕疑抄(けつぎしよう)》(1659)の遺題100問,村瀬義益の《算法勿憚改(ふつたんかい)》(1673)の遺題100問の解答集を作っている。関孝和が世間に広く知られるきっかけを作った著書の《発微算法》(1674)は,沢口一之の《古今算法記》(1671)の遺題15問の解答書で,本書の中で,関孝和は,文字係数の多元高次方程式の表し方を示したのである。このようにわずか30年ほどで,高等数学へと和算の程度は高まったのである。…
…《改算記》と《算法根源記》の遺題に解答を与え,巻末に15問の遺題を示した。関孝和はこの15問の解を《発微算法》と題して発表したが,これが和算の高等数学へ進む第一歩であった。【下平 和夫】。…
…そのほか,元・明時代の中国数学書も研究している。出版された関の著書は,《古今算法記》の遺題の解答書である《発微算法》(1674)だけである。彼の没後,弟子の荒木村英は遺稿をまとめて《括要算法》(1712)を刊行した。…
…明治以前の日本人が研究した数学。研究者により,その初めを,(1)上古,(2)1627年(寛永4)刊の吉田光由著《塵劫記(じんごうき)》,(3)74年刊の関孝和著《発微算法(はつびさんぽう)》とする3通りがある。
[奈良・平安時代]
養老令(718)によれば,官吏養成のための学校である大学寮を設置し,現在の中学生くらいの少年がここで勉強した。…
※「発微算法」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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