発汗検査

内科学 第10版 「発汗検査」の解説

発汗検査(自律神経系の機能検査法)

(3)発汗検査
 発汗機能はおもにコリン作動性交感神経節後線維に支配され,発汗中枢から汗腺にいたる障害により発汗低下がみられる.温度変化刺激による汗腺活動による発汗を直接的,間接的に測定,発汗量,区域分布,閾値や各種刺激・負荷に対する反応をみることにより,交感神経遠心性異常を基盤とした病態を明らかにするのが発汗機能検査であり,以下の方法が汎用されている.
a.温熱発汗試験
 電気毛布や加熱室などにより被験者の体温を1~1.4度程上昇させ発汗状態を観察する.ミノール法ではヨウ素でんぷん反応を利用して加温前にヨードヒマシ油,アルコール混合液を全身に塗布し,乾燥後,でんぷんを散布する.発汗部位は濃紫色に変色し,その濃淡によってある程度発汗量が推定できる.ラップフィルム法では食品包装用ラップフィルムにヨード液と合成水糊を混合したものを塗布し,乾燥後,オブラート紙を密着させて同様に変色をみる.換気カプセル法は皮膚表面に密着させたカプセルを乾燥した空気または窒素ガスで灌流し,流出部の湿度変化を電気信号に変換し連続記録する方法である.経時的変化をとらえられるうえに定量性にすぐれるが,測定範囲が限られる.
b.薬物発汗誘発試験
 薬物発汗誘発試験は発汗低下・消失が節前線維を含む中枢側障害であるのか,節後線維あるいは汗腺自体であるのかの鑑別に用いられる.アセチルコリン皮内試験では低濃度注射で交感神経節後線維終末が刺激され,発汗が生じ,高血濃度で用いると軸索反射性発汗が生じる.ピロカルピン皮内試験では直接汗腺が刺激され,発汗が生じる.
c.定量的軸索反射性発汗試験(quantitative sudomotor axon reflex test:QSART)
 本検査はアセチルコリン誘発末梢性発汗神経機能を定量化し,再現性にもすぐれると欧米では評価されている.ほかの多くの自律神経機能検査が多シナプスであるのに対して,QSARTは反射経路が節後性交感神経だけで行われている軸索反射をみるので,糖尿病性神経障害などの末梢神経障害の治療効果を判定するには特に有効とされる.汗腺の刺激としてはアセチルコリン溶液を用い,四肢の皮膚に微弱電流を通電させることにより,アセチルコリンを皮膚内へ浸潤させエクリン汗腺を刺激する.発汗の定量にはカプセル換気法を用い,発汗量の測定は通電中と通電終了後の10分間行う.発汗出現時間(潜時)および発汗量から節後性交換神経機能を判定する.QSARTの異常は①正常,②消失,③低下,④hung-upに分類され,糖尿病性神経障害では早期であっても③がみられるとされる.④のhung-upとはアセチルコリン刺激を止めても発汗が持続することをいい,疼痛性糖尿病性ニューロパチーや反射性交感神経性ジストロフィ症などでしばしば観察される.本試験と温熱により発汗がない場合,シナプス後異常と判定できる.問題は技術的に一般的でなく,一部の施設においてのみしか施行できないことにある.
d.交感神経性皮膚反応(sympathetic skin resp­onse:SSR)
 外因性刺激により誘発される皮膚電位反応であり,一般に電気刺激などにより生じた発汗活動による電位変化を手掌で測定することが原理である.[平田幸一]
■文献
Longo D, Fauci A, et al eds: Harrison’s Principles of Internal Medicine, 18th ed, McGraw-Hill, New York, 2011.
Low PA, Benarroch EE, eds: Clinical Autonomic Disorders. 3rd ed, Lippincott Williams and Wilkins, Philadelphia, 2008.
日本自律神経学会編:自律神経機能検査法,第4版,文光堂,東京,2007.

出典 内科学 第10版内科学 第10版について 情報

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