( 1 )上代において、「栲」は実際に衣料の素材として用いられていた。そのため、「白栲」は「万葉集」では、衣服に関する語の枕詞として多用される。実生活に即した語ではあるが、一方で「白妙」という美称的表記も用いられ、歌語としての萌芽が認められる。
( 2 )時代が下ると、「栲」が生活に用いられることはなくなり、それに伴って「白栲」は観念的なものとなっていく。衣服関係の言葉に冠するという用法は継承されるものの、歌語としては元来の用法からかけ離れた例も多く表われ、白色のみが強く意識され、白の象徴としての枕詞になっていく。