皮膚非結核性抗酸菌症(読み)ひふひけっかくせいこうさんきんしょう(英語表記)Cutaneous nontuberculous mycobacterial infection

六訂版 家庭医学大全科 「皮膚非結核性抗酸菌症」の解説

皮膚非結核性抗酸菌症
ひふひけっかくせいこうさんきんしょう
Cutaneous nontuberculous mycobacterial infection
(皮膚の病気)

どんな病気か

 結核菌に比べると毒性は格段に弱く、健康な人が発病することはほとんどありません。何らかの基礎疾患(HIV感染症副腎皮質(ふくじんひしつ)ステロイド薬の投与を受けている患者さんなど)があり、免疫力の低下により発症します。

 近年、増加傾向にあり、菌の種類としてはマイコバクテリウム・マリヌム、マイコバクテリウム・フォーチュイツム、マイコバクテリウム・アヴィウム­イントラセルラーレ・コンプレックス、マイコバクテリウム・ケロネの順に多く発生しています。

 マリヌム菌は魚や水の中におり、熱帯魚や水槽の水から感染します。フォーチュイツム菌やケロネ菌は土壌や水中にいて、そこから皮膚の小さい傷などに感染します。

 アヴィウム菌の感染経路は現在不明ですが、「24時間風呂」を介して家族内に発生した報告があります。

①マイコバクテリウム・マリヌム感染症

 菌の培養には約2週間が必要です。

 皮膚の発疹は、(ひじ)(ひざ)・手足・指趾(しし)に多くみられます。赤いぶつぶつ、皮膚の塊やしこり膿疱(のうほう)潰瘍膿瘍(のうよう)などとしてみられ(図58)、1箇所にかたまっていたり(限局型)、リンパ管に沿って飛石状に並ぶリンパ管型、全身の皮膚に多発する播種型(はしゅがた)があります。痛みなどはほとんどありません。

 治療は、ミノサイクリンが第一選択となり、そのほかリファンピシンオフロキサシンなども有効です。皮膚病変の部分を、カイロなどで温める温熱療法と併用すると効果的です。

②マイコバクテリウム・フォーチュイツムおよびケロネ感染症

 よくできる部位はお尻や四肢などで、とくに傷を受けやすい下肢に多く発生します。両菌とも皮膚にできる発疹はよく似ています。

 治療は、マリヌム感染症と同様にします。

③マイコバクテリウム・アヴィウム­イントラセルラーレ・コンプレックス感染症

 培養には2~4週間が必要です。

 発生部位は多くは腰、下肢です。赤いぶつぶつ、しこり、膿瘍などとしてみられ、病変は多発することもあります。

 治療は、クラリスロマイシンイソニアジド、リファンピシンの併用で、6~12カ月の内服が必要です。

多田 讓治


出典 法研「六訂版 家庭医学大全科」六訂版 家庭医学大全科について 情報

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