直川庄(読み)のうがわのしよう

日本歴史地名大系 「直川庄」の解説

直川庄
のうがわのしよう

ほぼ直川の地に比定される。「直河」とも記され、古代直川郷(和名抄)の中心地と考えられる。国府に隣接するためか、長く国衙領として「直川保」「直川郷」と称されてきた。承安四年(一一七四)一二月日付紀実俊解状案(栗栖家文書、以下同文書による)に「直川保河南嶋久重名内松門名」とみえるのが早い。建久三年(一一九二)一二月一日付紀伊国留守所符案および同年一二月日付紀実俊解状案によれば、直川保は散位紀朝臣実俊の先祖相伝の所領であり、その所領は刀禰職であったらしく、同五年二月六日付紀実俊解状案によれば、当保の刀禰職を「公事不堪」の理由で「付属当郷刀禰職於舎弟範成朝臣已畢」とある。紀実俊の一族は直川と河南の栗栖くるす庄に勢力をもち、後には紀ノ川の中洲であった松門まつかど名を開発し、栗栖氏を称して有力土豪となる(→松門名。承安四年の文書には在庁官人として散位紀朝臣直川惣新大夫・直川介大夫の名がみえ、建久五年の文書には刀禰散位紀朝臣紀大夫範成や散位紀朝臣直川介大夫宗成らが署判を加えており、いずれも紀実俊の一族と考えられる。

鎌倉時代中期以後は直川郷・直川庄が並行して史料に現われ、国衙領の大部分は荘園化して一部が国衙領として残された模様であるが、立荘の時期は明らかでない。

出典 平凡社「日本歴史地名大系」日本歴史地名大系について 情報

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