失認症のうちの視覚失認の一つ。prosopagnosiaはギリシア語の「prosopon(顔)」と医学用語の「agnosia(失認)」を合成したものである。脳損傷、とくに側頭葉に偏在する顔領域の認識機能の障害により、顔の輪郭や目・鼻・口など顔の構成要素は知覚できるが、全体としてその顔がだれの顔であるかを認識できない。また、家族や親族などよく知る人の顔が区別できない、発症後に初めて会った人の顔が何回見ても覚えられないといった症状が現れる。そのため失顔症の俗称もある。しかし、声や体型、服装や眼鏡など顔以外の特徴を代償的に知覚することで、人を識別していることも多い。したがって、先天的な相貌失認などは自覚されていないケースもあると考えられる。また、特定の人物だけは識別されるケースも報告されており、症状は障害の程度に応じてさまざまである。さらに遺伝的素因も指摘されているが、血縁者に既往がなく特定個人に障害がみられるケースもある。1947年にボダマーJoachim Bodamer(1910―1985)によりこの概念が提唱され、ほかの視覚失認と区別されることになった。
[編集部]
(2013-5-28)
…意識障害も痴呆もなく感覚機能も正常で,対象の存在を知覚することはできるが,ある特定の感覚に関してはその対象が何であるかを認識できない症状をいう。たとえば視覚失認の一型である相貌失認では,傍らにいる母親の顔形は見えていても,それを視覚的に母親の顔と識別できず,表情もわからない。しかし,声を聞くと直ちに母親であることを認めるものである。…
※「相貌失認」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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