日本大百科全書(ニッポニカ) 「省力産業」の意味・わかりやすい解説
省力産業
しょうりょくさんぎょう
labor saving machinery industry
労働力を省いて、生産やサービスの拡大を図るための機械器具・システムのメーカーの総称。
省力化は、単純労働を機械に置き換える自動化、オートメーション化に始まり、コストに占める賃金比率の削減を中心課題としていたが、最近ではこれと並行して、省エネルギー、省資源をも可能とする機械システムの作成が目覚ましい進展をみせている。たとえば1983年(昭和58)に工作機械生産総額の60.8%(4266億円)を占めるに至ったNC(数値制御)工作機械は、生産性の拡大、電力コストの大幅削減(省エネ)、熟練工不足の解消、均質加工による不良品率の低下(省資源)を可能にしている。1975~83年にかけて年率46.1%の高成長を達成し、84年に2500億円の生産額に達した産業用ロボットも、溶接ロボット、塗装ロボット、組立てロボットなどを中心に、省力化から無人化への道を可能にしており、人間の作業に必要な換気、空調、照明を不要とする省エネ、不良品削減による省資源効果をあげ、いずれも世界水準を大きくリードしている。
この種のメカトロ技術は、遠隔操作によって人間の目や手の届かないものを検知、操作したり、人間にはできない危険な労働環境での作業が可能であるほか、精度向上、誤操作回避が可能となり、人間の能力を超える密度と速度、確実度をもって情報を伝達・処理する(たとえばオフィスオートメーション)など、その応用範囲はきわめて広い。その需要分野は、エネルギー、工業、教育、医療、レジャーなどの産業面はもとより、防犯・防災・新交通システムなどの社会面、さらにはオフィスから家庭まで、社会システム全体に及ぶ可能性をみせており、高度産業社会実現のための有力産業の一つとして、その市場規模は将来きわめて巨大なものとなるであろう。
[殿村晋一]
『森清著『ロボタイゼーション』(1984・技術と人間)』▽『吉川弘之著『ロボットと人間』(1985・日本放送出版協会)』▽『岩崎武司著『ロボット産業最前線』(1981・市場新聞社)』