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中石器時代 ちゅうせっきじだいMesolithic age

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

中石器時代
ちゅうせっきじだい
Mesolithic age

考古学における年代区分の一つ。完新世初頭,旧石器時代新石器時代の中間の文化期で,氷河期が終り,従来の更新世から環境が一変したこの時期に,人類は弓矢の考案,漁労技術の開発などにより,それぞれの環境で種々の適応をして,地方色豊かな文化を形成した。西南アジアの諸文化,パレスチナナトゥフ文化などもこの時期にあたるが,新石器文化の萌芽を示しており,一般にはヨーロッパの西・北部の文化が典型とされている。特徴的なものとして種々の細石器がある。

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デジタル大辞泉の解説

ちゅうせっき‐じだい〔チユウセキキ‐〕【中石器時代】

食料採集を生活の基盤とする完新世初頭の時代。そのころの文化を中石器文化という。日本では縄文時代の一部に相当するという説もある。→石器時代

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百科事典マイペディアの解説

中石器時代【ちゅうせっきじだい】

旧石器時代新石器時代の中間の文化段階で,洪積世末から沖積世初めころ(前1万2000年から前5000年)に当たる。狩猟採集文化の終末相で,旧石器時代には狩猟が主であったのに対し水産が盛んとなり,末期には貝塚もみられる。
→関連項目カプサ文化カンピニー文化沙苑文化石器時代バクソン文化ホアビン文化モルガン

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世界大百科事典 第2版の解説

ちゅうせっきじだい【中石器時代 Mesolithic】

石器時代を3区分した際に,より古い旧石器時代と,より新しい新石器時代の中間に設定された時代名。1865年にJ.ラボックが,旧石器時代と新石器時代の2時期に石器時代を細分したのち,翌66年にウェストロップH.Westroppが小型の打製石器の時代として,中石器時代を加えたのが最初である。その後,モルガンJ.de Morganによって,明確な時代概念が与えられた。典型的な形でみられるのはヨーロッパとオリエント地域であるが,世界的な石器の小型化や水産資源の利用の拡大を一つの流れとみなし,必ずしも同一の内容をもつわけではないが,中石器時代という区分がその他の地域でも用いられている。

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大辞林 第三版の解説

ちゅうせっきじだい【中石器時代】

旧石器時代と新石器時代の中間の時代。 → 石器時代

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

中石器時代
ちゅうせっきじだい
Mesolithic Age英語
Mesolithikumドイツ語

石器時代を三分した場合、旧石器時代と新石器時代の中間に位置する時代のこと。旧石器時代と新石器時代という時代の設定は、1865年、イギリスのラボック(1834―1913)によってなされたが、遺物のうえで両者は直結せず、この溝渠(こうきょ)を説明するために種々の仮説が提出された(いわゆる溝渠(ハエイタス)問題)。19世紀の末葉になると、この溝渠を満たすような石器もヨーロッパや北アフリカの各地で発見されるようになった。そこで1909年、フランスのドゥ・モルガン(1857―1924)は、この中間的、過渡的遺物の所属する時代を中石器時代とよぶことを提案した。Mesolithicの語は、ギリシア語のmesos(中間の)とlithos(石)からつくられたことばである。しかしこの時代概念の設定には、初めから強い反対意見があった。反対したのは有力な学者たちであって、彼らは大きな相違のあるのはむしろ旧石器時代の前期と後期の間であり、この後期と中石器時代の文化は基本的な相違はないと主張した。そこでフランスのブルイユ(1877―1961)は、いわゆる旧石器時代前期のみを旧石器時代とよび、これまでの旧石器時代後期と過渡的な時代(いわゆる中石器時代)とをあわせて小石器時代Leptolithiqueと称したが、後者はギリシア語のleptos(小さい、精巧な)とlithosとの合成語であって、旧石器時代後期以降の石器が小形化していることに基づいている。また、オーストリアのメンギーン(1888―1973)は、これまでの旧石器時代前期を原石器時代Protolithikum、そして同後期と過渡期とをあわせて亜石器時代Miolithikumとよんだ。後者は、ギリシア語のmeion(より少ない)とlithosとの合成語であった。このような反駁(はんばく)にあい、「中石器時代」という概念は学界全般には普及しなかった。
 およそ石器時代は、石器の磨製法の有無によって旧石器時代と新石器時代とに区分されている。いわゆる中石器時代にはまだ磨製法は考案されていなかったから、旧石器時代と中石器時代とは基本的には同一時代であって、それはあわせて一つの時代として新石器時代に対立するものと理解されるべきである。その意味では、中石器時代という時代概念の成立根拠は薄弱とみなされる。フランスには、中石器時代の語を認めず、かわりにEpipalolithique(晩期旧石器時代)の語を使用する学者も少なくない。現在、中石器時代という語が使われているのは、主としてイギリス、北ヨーロッパ諸国や旧ソ連である。このように使用される場合も、ユーラシア大陸や北アフリカに限られている。内陸アフリカを研究する考古学者たちは、石器時代を三分し、真ん中の時代をMiddle Stone Ageとよんでいるが、これは中石器時代とは内容を異にする中間石器時代の義であり、かれこれ混同せぬことが必要である。[角田文衛]

中石器時代の概観

いま反対論者の意見をかたわらに置いて中石器時代の概要を述べると、第一に強調されるのは、それが主として解氷期に該当すること、ならびに当時の人々の生活が獲得経済(狩猟、漁労、植物採集)に依存していたことである。この時代の遺物は、ヨーロッパ(極北地帯を除く)、北アフリカ、西南アジア、部分的にはインド、パキスタン、内モンゴル、日本などにも分布しており、これに比定される多数の文化が各地で設定されている。アジール文化、タルドノワ文化、カプサ文化、マグレモーゼ文化、クンダ文化、エルテベーレ文化などは代表的な中石器文化といえよう。[角田文衛]

精器文化

石器の型式のうえからみると、現在知られている多数の中石器諸文化は、〔1〕精器文化(または広義の細石器文化)と、〔2〕粗器文化とに大別される。主流をなした精器文化は、細石器microlithをもって特色としている。これは単に細小な石器をいうのではなく、一定の形態を予想して石核から剥取(はくしゅ)された小さい石刃(せきじん)や剥片をそのまま、あるいは側縁だけにわずかに修正を施した石器を意味している。もっとも特徴的な細石器は、細彫器microburinや梯形(ていけい)の石刃などである。精器文化の特色は、(1)細彫器を含めてさまざまな細石器が使用されたこと、(2)狩猟は、個人狩猟が主で、弓矢や投げ槍(やり)がおもな猟具であったこと、(3)漁労は、銛(もり)で行われたが、やがて釣り針や漁網が発明されたこと、(4)貝類の捕食も盛んであって、ときとしては住居の近くに貝塚を残したこと、(5)植物の球根や野生の穀草からとった穀物を食糧としたこと、(6)狩猟の効果をあげるため、イヌが家畜化されたこと、(7)遺跡によって量に差異はあるが、骨角器の使用も盛んであり、骨角や貝殻を用いたさまざまな装身具もつくられたことなどである。細石器は柄に着装して、あるいは棒の側縁に列をなしてはめ込んで使用された。[角田文衛]

粗器文化

粗器文化のほうは、旧石器文化的な伝統の強い停滞的な文化であって、ヨーロッパの西部や北東部に存在した。フランスのカンピニー文化はその代表的な例である。粗製の石鍬(いしくわ)や鶴嘴斧(つるはしおの)が特徴であるが、これらは植物の採集や栽培に用いられた。
 中石器文化は、解氷期という地形や気候の変化の多い時代に行われた。この厳しい環境のなかで生き抜いたため、人々はみごとな美術を育成するだけの余裕に欠けていた。スペイン東部の岩壁画は著名であるが、彫像などはみるべきものはない。停滞的な中石器文化(たとえばデンマークのエルテベーレ文化)では土器が使用されたが、これは南東から伝播(でんぱ)した新石器文化の影響によるものであろう。[角田文衛]

新石器時代への移行

同じく精器文化といっても、そこには先進的と後進的との区別があった。もっとも先進的な精器文化は、イラン西部、イラク北部、アナトリア南東部、シリア、パレスチナなどにみられた。ナトゥーフ文化(シリア)やパレガウラ文化(イラク)などの名はよく知られている。この方面では、紀元前9000年ごろに石器の磨製法が考案され、またほとんど時を同じくして穀草の栽培(農耕)とヒツジ・ヤギの飼育(牧畜)が始まり、また製陶術が開発された。いわゆる「新石器革命」neolithic revolutionである。しかし後進的な地域では、中石器文化は、前3000年ころまで、所によってはさらに長く停滞した。
 中石器時代には、旧石器時代後期のような優れた芸術は育たなかった。石器も骨角器も、材料の節約が図られ、作りも精巧ではなかった。しかし新しい環境に必死の姿勢で適応しようとして試みた努力は、生産経済による文化、生活の一大躍進を招き、そこに中石器時代の文化の世界史的意義がみいだされるのである。[角田文衛]
『G. Clark World Prehistory, 3rd ed. (1977, Cambridge) ▽T. Champion and others Prehistoric Europe (1984. London) ▽K. J. Narr (hrsg.) Handbuch der Urgeschichte I ltere und Mittlere Steinzeit (1966. Bern und Mnchen)』

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世界大百科事典内の中石器時代の言及

【新石器時代】より

…しかしその後,彼の意向に反してこの概念は世界各地で採用されることになった。なお旧石器時代と新石器時代との間に,過渡的な段階として中石器時代をおくことが,イギリスのA.ブラウンによって提唱され(1892),20世紀に入って中石器時代の概念が学界に広まるとともに,ラボックの〈新石器時代〉の一部は中石器時代に転属されることになった。ラボックが新石器時代に含めたエルテベレ文化は,現在は中石器時代文化として扱われている。…

【モルガン】より

…また該博な知識を基礎に先史時代あるいは文明の起源に関する概説書や方法論についての書物も刊行して考古学界に大きく寄与した。なかでも,その提唱は古いけれどもなお不明確であった中石器時代の概念を人類文化史の中に定着させた功績は,スーサ発掘のそれに優るとも劣らないものである。【小野山 節】。…

※「中石器時代」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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