デンマークのトムセンが提唱した三時代法による時代の一つ。利器の材料にもっぱら石が使用され、まだ銅、青銅、鉄が利器の材料に用いられぬ時代をいう(英語ではstone age、ドイツ語ではSteinzeit、デンマーク語ではstenalder)。より厳密には、人間がまだ冶金(やきん)術を知らなかった時代と規定すべきである。冶金術が知られていないから、利器その他の器具はおもに石でつくられはしたが、ある種の事情の下でそれらが木材でつくられても、あるいは骨角でつくられても、石器時代であることには変わりはない。
人間の歴史の大部分は石器時代に該当し、ほとんど200万年にわたっている。考古学者は、石器がもっぱら打剥(だはく)法によってつくられ、磨製法が知られていない時代を旧石器時代、石器の製作に磨製法、喙敲(かいこう)法が知られた時代を新石器時代とよび、またその中間の過渡的時代を中石器時代と称することもある。ニューギニアやアンダマン島などには、いまなお石器時代に停滞する人々もいるが、旧大陸では紀元前3000年ころから石器時代は終わりを告げ始めている。またコロンブス以前のアメリカの原住民も、アンデス地帯や中米の一部を除いては、石器時代に停滞していた。
石器時代というのは、冶金術の有無に基づいた技術史的な時代区分による時代である。したがって生業の形態とは直接関係はないが、石器時代の大部分を通じて人間は狩猟採集という獲得経済に生きていた。農耕、牧畜を生業としたのは先進地域における一部の新石器時代人であった。
[角田文衛]
『角田文衛著『古代学序説』(1972・山川出版社)』
考古学の時代区分。デンマークの王立古文献協会が1836年に刊行した《北欧古代学入門》で,トムセンが人類文化を石器時代,青銅器時代,鉄器時代の3時代に区分し,この順の発達を説いたことに基づく。トムセンの定義によると石器時代は,〈武器と道具が,石や木,骨などで作られ,金属はほとんど使われていないか,あるいは全然使われていない時代〉である。のち,イギリスのJ.ラボックは,石器時代を旧石器時代と新石器時代とに分け(1865),またイギリスのH.M.ウェストロップが両者間に中石器時代の存在を提唱した(1872)。日本に石器時代が存在したことは,P.F.B.vonシーボルトの《日本》(1832-51)で初めて指摘された。明治時代には,石期,石属世期などの呼称もあったが,三宅米吉が石器時代とよんで(1894)以来この名が普及した。旧石器時代,新石器時代の名称も三宅に始まる。
→旧石器時代 →新石器時代
執筆者:佐原 眞
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報
人類の過去に,石器を使用した時代があったことは,すでにギリシア・ローマ時代に想定されていたが,1819年,デンマークのトムセンが国立博物館の資料を石器時代・青銅器時代・初期鉄器時代の三時期法によって分類し陳列したことから,考古学的な資料にもとづいた石器時代の設定が始まった。65年,J.ラボックが石器時代を旧石器時代と新石器時代にわけ,前者は打製石器を使用し絶滅動物と共存した時代,後者は磨製石器を使用し,金以外の金属を知らない時代とした。ヨーロッパではその後,両者の間に中石器時代を設定。日本では,明治20年代になって「石器時代人種論」の高揚とともに,縄文時代を石器時代とよんだが,正しくは新石器時代というべきであった。
出典 山川出版社「山川 日本史小辞典 改訂新版」山川 日本史小辞典 改訂新版について 情報
石器を主要な道具として使っていた最古の文化段階。石器時代の継続期間は地域によって異なる。石器時代には,旧石器時代,中石器時代,新石器時代の三つがあり,それぞれ定形化した石器と技術の段階を示す。鉄器時代,青銅器時代に先立つ考古学上の時代区分で,C.J.トムゼンによって主唱された。
出典 山川出版社「山川 世界史小辞典 改訂新版」山川 世界史小辞典 改訂新版について 情報
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
出典 旺文社世界史事典 三訂版旺文社世界史事典 三訂版について 情報
出典 旺文社日本史事典 三訂版旺文社日本史事典 三訂版について 情報
…人類がこのような体験をもったのは200万年をさかのぼる過去のことであったと考えられている。 石器をおもに利器として活用した時代を石器時代と呼び,旧石器時代と新石器時代に分ける。日本の場合,新石器時代に当たる時代は縄文時代および弥生時代である。…
※「石器時代」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
年齢を問わず、多様なキャリア形成で活躍する働き方。企業には専門人材の育成支援やリスキリング(学び直し)の機会提供、女性活躍推進や従業員と役員の接点拡大などが求められる。人材の確保につながり、従業員を...
10/29 小学館の図鑑NEO[新版]動物を追加
10/22 デジタル大辞泉を更新
10/22 デジタル大辞泉プラスを更新
10/1 共同通信ニュース用語解説を追加
9/20 日本大百科全書(ニッポニカ)を更新