日本大百科全書(ニッポニカ) 「砂丘農業」の意味・わかりやすい解説
砂丘農業
さきゅうのうぎょう
砂丘地で行われる農業で、砂丘地農業ともいう。砂丘地は通常、海岸砂丘と内陸砂丘に区分されるが、日本では海岸砂丘が多くみられる。内陸砂丘は、大陸の乾燥地帯にできている砂漠の一部であるので、日本でいう砂丘とは区別されなければならない。
砂丘地(海岸砂丘)は海成沖積砂土からなり、粘土、有機質が乏しいため、保水力が弱く乾燥しやすい。と同時に、作物の養分となる要素も乏しく、いわゆる地力が低い。乾燥すると、風速3メートル程度でも飛砂となって移動することが多い。また熱伝導率、熱容量ともに小さいため、熱しやすく冷めやすくて、昼と夜の地温較差が大きい。地域によっては夏季の地表温度が日中50℃を超え、夜間は20℃前後に下がり、その較差は30℃にも及ぶ。
こうした砂丘地での農業は、風害や干害を受けやすく、かつ多量の施肥や労働の投入を必要とすることから経営的に困難とされてきたが、昭和30年代から全国的に防風林や灌水(かんすい)施設の整備が進み、ナガイモ、ラッキョウ、アスパラガス、スイカ、トマト、葉タバコ、ブドウなど各種商品作物の産地として脚光を浴びるようになった。各地にいろいろな砂丘特産物も出現している。なお、鳥取大学乾燥地研究センターでは、この砂丘利用の基礎研究をしているが、海外でもアメリカを中心として、海岸・内陸を問わず、砂丘地での灌漑(かんがい)農業開発の研究が盛んである。
[今井鐳蔵]