暴風や強い季節風から村落の生活環境や農業などを守るために育成された森林。公共的な立場から,とくに必要とするときには防風保安林が指定される。森林が風を防ぐ効果があることは古くから知られており,風除林(かぜよけばやし)として作られてきた。例えば,山梨県小淵沢では1697年(元禄10)にマツを風除林として植えつけ,村中共同して管理することが村定(むらさだめ)に示されている。弘前藩では1864年(元治1)に,村々1軒ごとにマツの種子5合ずつの採取を割り付けており,海岸防風林造成を藩の主要な政策としていたことを示している。森林による防風の効果は,森林の風上側は樹高の6倍,風下側は樹高の35倍の距離にまで及ぶとされている。そのうち最も効果のあるのは風下側で樹高の4~10倍の範囲である。森林はある程度空間のあるほうがよい。防風林の効力は暴風の力を抑えるほか,寒風,飛砂,潮風,津波,濃霧なども防ぐ。防風林はその位置によって,内陸防風林と海岸防風林に分ける。内陸防風林の例として古くは,川越藩の柳沢吉保が1694年(元禄7)にこの地域の農業開発のため,からっ風の防止,関東ロームの飛散の防止のために碁盤目状に防風林を造成させた。また,北海道開拓にあたって,十勝平野や根釧台地に大規模な防風林を造成している。海岸防風林には,幕藩時代の新田開発にあたって,海岸よりの飛砂防止などのための防風林造成を行った秋田県の能代,鹿児島県の吹上浜,静岡県の千本松原などの例が各地にみられる。近年は沿岸地帯の工業開発や都市開発が進み,海岸防風林は急激に失われつつあり,残されたものは風致上きわめて重要なものとなっている。しかしながら,防風林を永続的に維持するためには,老衰前に更新する必要があり,帯状に数回に分けて更新するには,少なくとも100mの幅員の森林であることが望ましい。また,平素からの保護管理が必要である。なお,屋敷林の中には防風を目的として造成されたものが多い。これは冬の偏西風(季節風)を抑えて寒さをしのぎ生活を楽にするためのもので,敷地の西側,北側に造成されている。富山,石川県ではスギ,鳥取,島根県ではクロマツ,関東ではシラカシ,ケヤキを植えている。
執筆者:筒井 迪夫+橋本 与良
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森林の摩擦抵抗によって風速を減少させ、強風による災害を防止すると同時に、土地利用度を高める働きをする林帯。法律的には森林法における防風保安林、飛砂防備保安林、潮害防備保安林が防風林にあたるが、面積的には保安林に指定されていない防風林が多い。防風林は内陸田畑の作物を保護する内陸防風林(あるいは耕地防風林)と、沿岸地域にあって暴風、潮風、飛砂を防ぎ災害防止と生活環境の改善に大きな働きをする海岸防風林の二つに大別される。林帯は常風に直交させ、その幅は内陸防風林は10メートル以上、海岸防風林は150メートル以上が必要である。樹種は、成長が速く深根性で耐風性の大きな常緑樹が用いられる。
[笠原義人]
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…具体的には主産物の乱伐,過伐,副産物の乱収,暴採により,地力が破壊,減退,消耗することのない技術のことで,それが(1)の内容である。(2)の森林保全とは,国土の荒廃を防止し,環境を保全する目的の森林を保持することで,水源地帯の森林を適正に管理して水の貯留に役だて(〈水源涵養林〉の項目を参照),土砂が流出,崩壊しやすい場所では森林を育ててそれを防ぎ,風が強く,飛砂の災害の多い場所では森林によってそれを防ぐ(〈防風林〉の項目を参照)。このような目的で森林を取り扱う営為が(2)の内容である。…
※「防風林」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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