硬質材料(読み)こうしつざいりょう

改訂新版 世界大百科事典 「硬質材料」の意味・わかりやすい解説

硬質材料 (こうしつざいりょう)

炭化物,窒化物,ホウ化物,ある種の酸化物には硬さの非常に高いものがある。この性質を利用する物質を総称して硬質材料という。実用されているものにダイヤモンドC,炭化ケイ素SiC,炭化ホウ素B4C,チタンカーバイドTiC,炭化タングステンWC,窒化ホウ素(立方晶)BN,窒化チタンTiN,窒化ケイ素Si3N4,窒化アルミニウムAlN,アルミナAl2O3などがある。物質の硬さは,変形させようとする力に対する抵抗の大小と考えてよい。せん断力がかかった場合,せん断面を挟んで隣り合った原子間の距離と角度をともに変形させるわけであるから,原子結合に方向性のある共有結合に近いほうが変形に抗する力が大となる。そして原子間の化学結合の強さと,一定容積中にある化学結合の数が,硬さの基本になる。つまり,原子価の大きいほど,また結合距離の小さいほど,硬さは高いことになる。酸化物については,充てんの関係からイオン半径の小さい2価か3価の金属酸化物が高硬度で,アルミナ,酸化クロム(Ⅲ)Cr2O3,酸化鉄(Ⅲ)Fe2O3,ベリリア(酸化ベリリウム)BeOなどがある。硬質材料は研磨材工具ノズル,軸受などに使用される。ものを削ったり,研いだり,磨いたり,塑性変形させるのに使われる研磨材や工具は,加工しようとする材料より硬くて変形しにくいことが必要である。硬いということはもろいということと表裏の関係にある。炭化物を鉄族金属で結合した複合体の形の超硬合金は,もろさを避けるためのくふうである。
硬さ試験
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

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