化学式SiC。純粋なものは無色透明の六角板状結晶であるが,ふつうは緑色ないし黒紫色を呈する。比重3.21。硬度が高く(ヌープ硬さは約2500),研磨材に使われる。1891年に初めて出現した人造研磨材で,アメリカのE.G.アチソンが発明し,アメリカのカーボランダム社で商品化されたものである。同社の商品名をカーボランダムCarborundumという。ケイ砂SiO2とコークスCとの混合物を電気抵抗炉で加熱し,高温(2000℃)で反応させて製造する。
SiO2+3C─→SiC+2CO
SiCの純度が高いインゴットを粉砕してつくった緑色のものをGC砥粒といい,SiCの純度が普通程度のインゴットからのものをC砥粒という。研磨材としてのほか,抵抗発熱体に用いられ,非直線的な電流-電圧特性をもつ半導体であるためバリスターとして使われる。気相反応法でつくった単結晶繊維はサーメット用強化材,耐熱性断熱材に用いられる。
炭化ケイ素の粉末を原料とし,反応焼結,常圧焼結,ホットプレス法などでつくったセラミックスは,高温での強度が大きく,熱伝導性がよく,急熱急冷によく耐える性質がある。1000℃以上の温度で使用できる高温構造材料として,ガスタービン部品,核融合炉真空壁材,耐熱耐食ジグ(軸受,メカニカルシール)などへの適用が図られている。
執筆者:今中 治
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
SiC(40.10).19世紀末から工業化され,同名の会社の商品名カーボランダムで知られている.天然にもモアッサナイト[CAS 12125-94-9]として存在する.1905年にH. Moissann(モアッサン)がアリゾナ州でいん石中に発見した.一方の原子のまわりに他方の原子が四面体型に配置された層構造の積み重ねの繰り返しパターンの違いで,200種類以上の変態が存在する.基本的には六方晶系,りょう面体格子の多数の変形からなるα型と立方晶系のβ型に分類される.無色の結晶であるが,純度に応じて淡黄色から黒色のものまである.工業的には,19世紀末以来の古典的方法で,けい石とコークスを電気炉で2100 ℃ 以上に加熱すると,α型SiC粉末が得られる.ハロゲン化ケイ素と炭化水素混合気体の熱分解でβ型が得られる.高純度品はCVD法による.工業量産製品は普通,青黒い色をしていて,ダイヤモンドについで硬く,モース硬さ9.5.2800 ℃ 以上で熱分解する.化学的に不活性で,水,酸,アルカリに不溶.王水,熱濃硝酸にも侵されない.H2,N2,COなどと反応しない.空気中では600 ℃ 付近からSiO2保護膜ができるが,さらに高温では O2 が保護膜中を浸透して酸化される.Cl2 とは,800 ℃ 以上で反応してSiCl4とCになる.酸化性のアルカリ溶融には侵される.耐食,耐熱性が大きく,強度,硬さも大きいことから,耐熱材,高温構造材(ディーゼル用排ガスフィルターなど),耐食材,耐摩耗材,研磨剤などとして用いられる.ワイドバンドギャップ半導体として,高効率のパワートランジスター,高周波素子などとしての利用がある.[CAS 409-21-2]
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報
出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報
…アメリカの化学技術者,企業家で,炭化ケイ素(カーボランダム),人造黒鉛(人造グラファイト)の製法発明者。ワシントン生れ。…
※「炭化珪素」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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