窒化硼素(読み)チッカホウソ

デジタル大辞泉 「窒化硼素」の意味・読み・例文・類語

ちっか‐ほうそ〔チツクワハウソ〕【窒化×硼素】

硼素窒化物無色または淡黄色。高温高圧処理によりCBNとよばれる等軸晶系結晶構造になり、ダイヤモンドとほぼ同じ硬度超砥粒として用いられる。化学式BN

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化学辞典 第2版 「窒化硼素」の解説

窒化ホウ素
チッカホウソ
boron nitride

BN(24.82).おもな同素体は,六方晶(hexagonal)系のh-BN(α-BN),立方晶(cubic)系のc-BN(β-BN),立方晶系ウルツ鉱型(wurtzite)のw-BN(γ-BN)の3種類.h-BNは,BとNが交互に結合した平面六員環の黒鉛型構造で,平面は層状に重なっている黒鉛と異なり,六員環は各層で,Bの下にN,その下にBがくるように上下に重なっている.B-N1.45 Å.層間距離3.34 Å.ホウ砂アンモニア,またはホウ砂,ホウ酸またはホウ酸塩とNH4Cl,シアン化アルカリ金属を加熱すると得られる.すぐれた熱伝導体であるが,黒鉛と異なり絶縁体である.c-BNは,h-BNをアルカリ金属,アルカリ土類金属窒化物を触媒として4万~8万atm,1400~1800 ℃ で処理すると得られる.ダイヤモンドのCを交互にBとNで置き換えた構造である.1957年にアメリカのGE社の化学者により合成され,ボラゾン(Borazon)と商標登録された(1969年).B-N1.57 Å.w-BNは,h-BNの衝撃波による動的,あるいは静的加圧処理で得られる.BCl3とNH3などからCVD法(化学蒸着法)により製造されるものは熱分解(pyrolytic)BN(p-BN)とよばれ,ヘリウムを透過させない緻密構造をもつ.プラズマ放電でBNナノチューブが合成され,カーボンナノチューブより高温空気中の安定性が高いため,電子放出用電極材としての開発が進められている.h-BNは無色の結晶.密度2.34 g cm-3.耐熱性が大きいが2500 ℃ 付近から昇華がはじまる.融点約3000 ℃.電気絶縁性は大きい(比抵抗 107 Ω m).耐化学薬品性も大きく,とくに酸に強い.熱アルカリ,溶融炭酸アルカリには急速に侵される.空気中では1100 ℃ 付近までは侵されないが,1200 ℃ 以上では徐々に酸化される.不活性気体中では2000 ℃ 以上まで耐える.水蒸気と加熱すると900 ℃ 以上で分解する.c-BNは無色の結晶.密度3.45 g cm-3.モース硬さ10で,ダイヤモンドにきずをつけることができる.物性および化学性はh-BNに準じる.h-BNはバンドギャップ5.8 eV で215 nm の蛍光発光が観測されている.耐熱材(るつぼ),広い温度範囲で使用できる潤滑剤,無機繊維として複合材料などに利用される.c-BNは研磨剤,切削剤(とくにダイヤモンドが使用できない高温用)などに用いられる.p-BNは半導体単結晶製造用るつぼ材料に用いられる.[CAS 10043-11-5]

出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報

改訂新版 世界大百科事典 「窒化硼素」の意味・わかりやすい解説

窒化ホウ(硼)素 (ちっかほうそ)
boron nitride

化学式BN。ホウ酸ナトリウムと塩化アンモニウムを混ぜて融解するか,三塩化ホウ素と過剰のアンモニアを混ぜてアンモニア雰囲気中750℃で熱分解するなどの方法でつくられる。結晶構造には黒鉛型六方晶,セン亜鉛鉱型立方晶,ウルツ鉱型六方晶の三つがある。常温常圧では黒鉛型六方晶が安定相である。

(1)黒鉛型窒化ホウ素 白色薄片状結晶で,構造は黒鉛に似る。B-N原子間距離は1.446Å,層間隔は3.34Å,原子間距離はホウ素および窒素の単結合,共有結合半径の和よりもかなり小さく,二重結合性をもつと思われる。しかし黒鉛と異なり電気伝導性が低く,また白色であるので電子の非局在化はないものと考えられる。融点約3000℃。真空中2700℃くらいで分解が始まる。これをホットプレスしたセラミックスは,高温での電気絶縁性,熱伝導性に優れ,急熱急冷に耐え,高温潤滑性をもつ。水,油,樹脂に分散させて高温用潤滑剤,離型剤とされ,成形品は非鉄金属溶解用るつぼ,ロケットノズル,高温構造材料などに使われる。ただし硬度は低く,強度も小さい。

(2)セン亜鉛鉱型窒化ホウ素 黒鉛型窒化ホウ素の粉末を6万~10万気圧,1500~2000℃でc軸方向に圧すると生ずる。この変化はアルカリ金属またはアルカリ土類金属によって触媒作用を受ける。1957年アメリカのゼネラル・エレクトリック(GE)社で開発され,約10年後に商品名ボラゾンBorazonとして商品化された。この立方晶窒化ホウ素cBNはダイヤモンド(ヌープ硬さ7000~9000)に次ぐ硬さ(ヌープ硬さ約4700)をもち,ダイヤモンドに比べて耐熱性に優れ,鉄系金属との反応性も小さい。cBN砥粒は耐熱超合金,高速度鋼,ダイス鋼などの高硬度難削金属の研削に賞用される。これを焼結した工具は焼入鋼や高硬度鋳鉄の切削に使われる。

(3)ウルツ鉱型窒化ホウ素 セン亜鉛鉱型窒化ホウ素よりさらに高圧で,温度はやや低い領域で合成される。衝撃波を用いると合成しやすい。日本で開発され,商品名ウルボンBNとして市販されている。ダイヤモンドとほぼ同程度の硬さをもち,cBNと同様の用途に使用されている。
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

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