研削または研磨作業に用いられる鉱物質の高硬度物質の総称。人工的に合成された人造品および天然産のものがあるが,人造品は天然品に比べてはるかに広範囲に用いられている。粒状または粉状の形にして使用するのが普通であり,この場合は砥粒(とりゆう)ともいう。人造の砥粒は,電気炉の高熱化学反応を伴う溶融操作によって製造されたインゴットから粉砕・整粒してつくられるが,広義の研磨材には,このインゴットおよび天然砥粒用鉱塊をも含める。
研磨材を大別すると,形状決め・寸法決めなどの材料除去をおもな目的とするもの(研削材)と,磨きなどの表面仕上げをおもな目的とするもの(たく磨材または磨き材)とに分けられる。
研磨材の性質として,硬さ,靱性(じんせい),耐摩耗性,粒度,粒形の五つが重要である。同一系統の研磨材でも,化学組成のわずかの違いによって,その性質にかなりの差がみられる。加工しようとする材料より硬くなければ,押込み・引っかき作用などを有効に営めないことは当然である。靱性は破砕しにくさの度合といってもよく,その逆の概念を破砕性という。組成が違えば,また同一組成の鉱物でも不純物の入り方が異なれば,靱性に差ができる。粒子が単結晶であるか,単結晶の集合組織であるかなどによっても,靱性は大きく影響される。耐摩耗性は,加工しようとする材料との組合せによって変わってくる。たとえば,鋼の研削ではアルミナ質のほうが炭化ケイ素質より砥粒切れ刃の摩耗が少ないが,鋳鉄の研削では逆になる。靱性が適当であれば,摩耗して鈍化した砥粒先端が破砕して,新しい切れ刃を生じることになる。粒度は,粒子の大きさとそのそろいの度合を示し,粒径をそろえる程度はJIS規格で定められ,♯8から♯3000まで35階級に区分されている。そのうち♯8から♯220を粗粒,♯240から♯3000までを微粉と区分している。実際には♯8以上の粗粒も,♯3000以下の微粉も用いられている。粒度をそろえるにはふつう,粗い粒子はふるい分け,細かい微粉は水簸(すいひ)による。磨きに用いる研磨材では粒子のそろい方と粒子の形状とが重要である。
(1)粒子を結合剤で円板状,直方体その他一定の形に成形して,研削といしまたは研削スティックとして研削,ホーニング,超仕上げなどに使用するもの,(2)粒子または微粉を布や紙の表面に〈にかわ〉などの接着剤で二次元的につけ,研磨布紙として使用するもの,(3)微粉を油脂質のものと混合して,油脂研磨剤としてバフ仕上げに使用するもの,(4)ばらばらの粒状・粉状のままラッピング加工などに使用するもの,などがある。研削といしや研磨布紙用の研磨材としてはアルミナ質,炭化ケイ素質が多く使われるが,アルミナ質は炭化ケイ素質に比べて一般に靱性に富む。難研削性の鉄鋼材料には最近,立方晶窒化ホウ素(cBN)が用いられるようになってきた。ダイヤモンド(合成,天然)は超硬合金,ガラス,セラミックスの研削に賞用されている。ダイヤモンドは最高の硬さをもつ研磨材であるが,熱変質しやすく,約700℃で酸化するのが欠点である。cBNはダイヤモンドに次いで硬く,熱にも強いのが特徴である。磨き用の研磨材として,硬い宝石に対してはダイヤモンド微粉,ガラスには酸化セリウム,シリコン単結晶には酸化ケイ素が使われている。
執筆者:今中 治
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
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出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
あらすり(grinding),ラッピング(lapping),磨き(polishing)で表面物質を取り去るための物質,または切削用の砥石や盤をつくるのに用いる固い物質.研作砥石は通常,砥粒(grain)を粘土,長石と混合して焼成してつくる.焼成しない場合は結合剤として合成レジン,ゴム,あるいはシェラックを用いる.砥粒には一般にSiCおよび溶融アルミナが,ときにはダイヤモンド,窒化ホウ素BNが使われる.
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報
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