改訂新版 世界大百科事典 「碑学」の意味・わかりやすい解説
碑学 (ひがく)
Bēi xué
中国,北朝の碑の書風を学ぶ一派のこと。法帖(ほうじよう)によって学ぶ立場の帖学に対していう。帖学は王羲之一派の書風を尊び,宋・元・明より清朝の嘉慶(1796-1820)の末年ごろまで盛んに行われたが,金石学の発展に伴って碑学がしだいに優勢になった。鄧石如(とうせきじよ)は篆隷(てんれい)の書法をよくし,碑学の開祖とされる。当時,書を学ぶ者に大きな刺激を与え,北朝の碑が重んじられる端緒を開いたのは,阮元(げんげん)の《南北書派論》と《北碑南帖論》である。彼は南帖と北碑とをはっきり二つの系統に分け,北碑の方が刻した当初の筆致を伝えていて正統であるとした。この説をさらに推し進めたのは包世臣で,《芸舟双楫(げいしゆうそうしゆう)》を著し,碑学の流行にますます拍車をかけた。清末になると康有為が出て,南帖よりも南碑に注目し,南北両朝の相互の関連性を説き,新しい体系を打ち立てた。日本においても,1880年に楊守敬が来日して,北碑の書風を紹介し,書道界に大きな影響を与えた。
執筆者:宇佐美 一博
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報