楊守敬(読み)ようしゅけい

日本大百科全書(ニッポニカ) 「楊守敬」の意味・わかりやすい解説

楊守敬
ようしゅけい
(1839―1915)

中国の清(しん)末から中華民国の初めにかけての学者。字(あざな)は惺吾(せいご)。隣蘇(りんそ)老人と号した。湖北省の人。商家の出身で、何度も科挙(かきょ)の試験を受けたが失敗し、仕官の望みを捨てて学問に没頭した。歴史地理、金石、目録、書学などに精通し著書はきわめて多い。歴史地理では『水経注(すいけいちゅう)』の研究に打ち込み、一生の業績である『水経注疏(そ)』は、その死後門弟の熊会貞(ゆうかいてい)(1859―1936)によって完成された。目録学は、1880年(明治13)清国公使館員として来日したとき、中国の古書が日本に伝存するのに刺激されて研究したもので『日本訪書志』の著がある。

 書道の学では金石学(主として碑刻文字の研究)に基礎を置いて旧来の書学を一新した。書家としては明治初年の日本の書道界に大きな影響を残している。

[日比野丈夫 2016年3月18日]

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改訂新版 世界大百科事典 「楊守敬」の意味・わかりやすい解説

楊守敬 (ようしゅけい)
Yáng Shǒu jìng
生没年:1840-1914

中国,清の学者。字は惺吾,晩年鄰蘇老人と号した。湖北宜都の人。博学をもって知られ,特に地理の学にくわしく,《水経注》の研究に力を用いた。《水経注要刪》40巻,熊会貞と共著の《水経注疏》40巻等の業績がある。訓詁学にも通じ,金石文字の考証を行った。能筆で,特に鐘や鼎の文字の模写を得意とした。黎庶昌の随員として日本に滞在中,書籍の探訪につとめ,数十万巻の善本を得た。《日本訪書志》はその書誌学的研究である。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「楊守敬」の意味・わかりやすい解説

楊守敬
ようしゅけい
Yang Shou-jing; Yang Shou-ching

[生]道光19(1839)
[没]1915
中国,清末,民国初期の学者。湖北省宜都の人。字は惺吾。号は鄰蘇老人。同治1 (1862) 年の挙人。光緒6 (80) 年公使館員として来日し,4年間滞在して中国古書を収集した。『日本訪書志』『古逸叢書』はその成果である。歴史地理学研究に最もすぐれ,『歴代地理志図』『水経注疏』『水経注図』の大作がある。その他,金石学,書,書論,目録学などに大きな寄与をした。

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デジタル版 日本人名大辞典+Plus 「楊守敬」の解説

楊守敬 よう-しゅけい

1839-1915 中国の学者,書家。
道光19年4月15日生まれ。博学で知られ,歴史地理学では「水経注」を研究。目録学では,明治13年(1880)来日の際,日本に伝存する中国古書を収集・研究し「日本訪書志」をあらわした。金石文字の考証,書道にもすぐれた。1915年1月9日死去。77歳。湖北省出身。字(あざな)は惺吾。号は鄰蘇老人。

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世界大百科事典(旧版)内の楊守敬の言及

【古逸叢書】より

…中国本土で早く滅び,日本にだけのこっていたものを集めた。いずれも黎庶昌が外交官として日本に在勤中に収集し,それを随員であった楊守敬が校正して,日本で原形そのままに復刻して刊行した。首尾完全な書物もあり,一部分だけしかのこっていないいわゆる〈残本〉もあるが,総計26種。…

【書】より

…そのため,幕末三筆の唐様書家が主体となり,その門人によって明治初期の書道界へと引き継がれている。1880年,駐日清国公使何如璋(かじよしよう)が招いた学者楊守敬(ようしゆけい)の来日は,近代書道の開眼の契機となった重要なできごとである。楊守敬は博学で,地理学のほか金石学にも造詣深く,来朝に際して多数の金石文拓本を持参した。…

【水経注】より

…だれがだれの説を盗用したかということが論争の的となり,今日に至るまでまだその結末はついていない。これらの研究を集大成した最終的決定版ともいうべきものは,清末から中華民国初年にかけての楊守敬によって作られた《水経注疏》である。その生前にはついに脱稿をみず,ごく一部分が発表されただけであったが,死後,門弟の熊会貞(ゆうかいてい)が遺志をついで完成させた。…

【日本訪書志】より

…中国,清代の楊守敬の著した書誌学書。30巻。…

【碑学】より

…清末になると康有為が出て,南帖よりも南碑に注目し,南北両朝の相互の関連性を説き,新しい体系を打ち立てた。日本においても,1880年に楊守敬が来日して,北碑の書風を紹介し,書道界に大きな影響を与えた。【宇佐美 一博】。…

※「楊守敬」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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