確証破壊戦略(読み)かくしょうはかいせんりゃく(英語表記)strategy of assured destruction

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「確証破壊戦略」の意味・わかりやすい解説

確証破壊戦略
かくしょうはかいせんりゃく
strategy of assured destruction

1960年2月の国防報告のなかで,アメリカの R.マクナマラ国防長官が提唱した核戦略。どのような状況からも,敵の第1撃を吸収したあと,報復反撃によって相手国の人口の 20~25%に致命傷を与え,工業力の2分の1ないし3分の2を破壊する潜在力をもてば,どのような国もどのような戦争目的をもっていても,先制第1撃を行いえない。というのは,このような大きな損害は,その国をして当分の間,国家としての機能を失わせるからである。このような確実な破壊の潜在力によって,核戦争抑止する戦略を確証破壊戦略という。その後,アメリカの核戦略は柔軟反応戦略相殺戦略へと変化した。

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世界大百科事典(旧版)内の確証破壊戦略の言及

【核戦略】より

…マクナマラは当初,敵の核戦力を攻撃する対兵力戦略counter‐force strategyを重視していたが,ソ連の核戦力の非脆弱化にともなって都市・工業地帯を攻撃する対都市戦略counter‐city strategy(対価値戦略counter‐value strategy)を重視する方向に転じ,敵の核戦力を攻撃しアメリカの損害を限定するとともに,敵の奇襲攻撃を受けても生き残った核戦力で反撃して〈敵に受け入れられないほどの損害を与える能力〉を持つ必要があると考えた。これは〈確証破壊戦略assured destruction strategy〉といわれ,60年代以降の核戦略の基礎となった。 この確証破壊戦略に対しては当初から批判がでていた。…

【核兵器】より

…アメリカのケネディ政権が提唱した〈柔軟反応戦略〉は,起こりうるあらゆる段階の戦争形態に即応可能な核戦力を保持することにより,対応上多様な選択肢を持ち,柔軟性を獲得して戦争を抑止しようという戦略であり,この基本思想はアメリカにおいて現在まで貫かれているといえる。そのほか62年から63年にマクナマラ国防長官が提唱した〈対都市戦略〉や〈対兵力戦略〉,64年から65年に提唱された〈被害局限戦略〉や〈確証破壊戦略〉がある。〈確証破壊戦略〉は,他国から核攻撃(第1撃)を受けた後においても報復攻撃(第2撃)能力を保有し,これで相手国に対し確実に,耐えられないほどの被害を与えるという戦略で,この戦力にはICBM,SLBM,長距離爆撃機が用いられる。…

※「確証破壊戦略」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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