家庭医学館 「神経病性関節症」の解説
しんけいびょうせいかんせつしょうしゃるこーかんせつ【神経病性関節症(シャルコー関節) Neuropathic Joint Disease】
関節には、いろいろな外力が加わった場合、破壊からのがれるしくみ(自己防衛機能)があり、それは中枢(ちゅうすう)と末梢神経(まっしょうしんけい)によってコントロールされています。
もし、この神経に障害がおこると、関節の防御機構がなくなって、関節がひどく破壊されてしまいます。これを神経病性関節症、またはシャルコー関節といいます。
神経病性関節症の原因疾患としては、脊髄癆(せきずいろう)(梅毒(ばいどく)による脊髄障害)、糖尿病(ひどくなると末梢神経炎をおこす)、脊髄空洞症(せきずいくうどうしょう)(脊髄に空洞が生じ神経障害をおこす)の3つの病気が代表的なものですが、もっとも多い原因は、脊髄癆です。
[症状]
関節に神経が通っていないために、関節は、こわれていても痛みがないことが特徴とされてきました。しかし、実際には軽い痛みを訴えることもあります。
関節の組織は、無秩序な破壊と増殖をくり返します。そのため、ひどく変形して、ぐらぐらしてきます。
また、膝(ひざ)では、多量の水が何回もたまることがあります。
この病気は、膝関節(しつかんせつ)にもっとも多くみられ、以下、股関節(こかんせつ)、足関節(そくかんせつ)、脊椎(せきつい)の順となっています。糖尿病が原因である場合は、多くは足に病変がみられ、脊髄空洞症が原因の場合は、腕の関節によくみられます。
[治療]
変形が進んだ神経病性関節症の治療はたいへんむずかしく、そのため、早期に発見して、関節がこわれる前に、つえや装具などで外力から関節を保護する初期治療がたいせつとなります。
変形が進行した場合は、下肢(かし)の関節は腕と異なり、機能障害が強くなるため、手術を行なうことがあります。
膝関節では関節固定術(関節を固めて動かなくする(「関節手術のいろいろ」))や人工関節置換術(「関節手術のいろいろ」)が、足関節では関節固定術が行なわれますが、固定した骨がつながらなかったり、人工関節がゆるむこともあり、手術がうまくいくとはかぎりません。
しかし最近では、手術手技の向上と、術後のリハビリテーションをきちんと行なうことによって、よい成績をあげつつあります。