福建人民政府(読み)ふっけんじんみんせいふ(英語表記)Fu-jian ren-min zheng-fu

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「福建人民政府」の意味・わかりやすい解説

福建人民政府
ふっけんじんみんせいふ
Fu-jian ren-min zheng-fu

1933年 11月~34年1月,反日反蒋を標榜して福建省福州に樹立された政府。正式名称は中華共和国人民革命政府。 32年の第1次上海事変の際に日本軍と積極的に戦った十九路軍は抗日意欲が強く,蒋介石は日本軍との衝突を避けるため十九路軍を上海から福建省に移駐させ,紅軍討伐を命じた。しかし,蔡廷かい,蒋光 鼐らの十九路軍将領は,広西派の李済 琛,陳銘枢第三党の黄き翔ら各党各派の反蒋派軍人,政治家らを結集して,33年 11月 20日福州で「中国全国人民臨時代表大会」を開き,人民権利宣言を採択。 21日蔡,蒋,李,陳らは国民党からの脱党電報を各地に発し,22日福建人民政府が成立し,十九路軍を「人民革命軍」と改称した。李済 琛が政府委員会主席,陳銘枢が文化委員会主席,蒋光 鼐が経済委員会主席,蔡廷かいが軍事委員会主席となり,その他社会民主主義者から国家主義者まで反日反蒋の立場に立つ雑多な人々が参加した。この政府樹立前の 10月 26日に,すでに十九路軍側と中国共産党側 (中華ソビエト共和国臨時政府と紅軍) との間に反日反蒋初歩協定が結ばれ,両者停戦,協力に関する取決めが成立していた。しかし,陳紹禹らに指導されていた共産党はその極左的方針と未熟さのために,福建人民政府を援助しなかった。 34年1月1日国民政府軍は総攻撃を開始し,1月 13日福建人民政府は崩壊した。

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改訂新版 世界大百科事典 「福建人民政府」の意味・わかりやすい解説

福建人民政府 (ふっけんじんみんせいふ)
Fú jiàn rén mín zhèng fǔ

1933年に中国の福建省福州にできた地方政権。上海事変で奮戦したため蔣介石に福建移駐・紅軍討伐を命ぜられた十九路軍を核にし,正式には中華共和国人民革命政府という。33年11月,李済深を政府委員会主席,陳銘枢,蔣光鼐,蔡廷鍇をそれぞれ文化,経済,軍事委員会主席にあてて組織され,多くの中間派反蔣人士を結集した。その政策は民主・自由の保証,土地改革・産業統制などであり,民主的社会主義的性格をおびるものであった。ますます強まる日本の侵略に憤激する世論を背景に,同政府は瑞金の中華ソビエト共和国と抗日反蔣のための合作協定を結んだが,王明ら中共指導部の極左日和見主義的対応にわざわいされて十分にその実をあげることができなかった。その結果,蔣介石軍の攻撃をうけて翌年1月,わずか55日後に崩壊させられだが,その10ヵ月後には瑞金政府も長征を余儀なくされたのである。
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