科学研究費助成事業(読み)かがくけんきゅうひじょせいじぎょう

日本大百科全書(ニッポニカ) 「科学研究費助成事業」の意味・わかりやすい解説

科学研究費助成事業
かがくけんきゅうひじょせいじぎょう

大学や研究機関の研究者に対し、研究者の自由な発想に基づく独創的・先駆的な学術研究を振興する目的で助成金を交付する事業。助成金は略して科研費とよばれる。文部科学省と独立行政法人日本学術振興会が公募し、研究助成金を交付する。対象となる学術研究は、人文・社会科学や自然科学などすべての分野にわたり、申請された研究計画のうち、関連分野の研究者による審査を経て採択された研究課題に研究費が助成される。2015年度(平成27)の助成額は約2300億円で、これは国による研究者向け公募型助成金の5割以上に上る。また、およそ8万1000件の研究課題に対して支援が行われた。

 科研費の歴史は、1918年(大正7)に自然科学分野の研究を対象に創設された科学奨励金に始まる。その後、1946年(昭和21)には人文・社会系分野まで対象が広げられた。また、2011年度(平成23)からは、研究費の運用が単年度区分にとらわれないように基金化方式が導入された。これにより、年度ごとに交付される助成金を科学研究費補助金、次年度分を含んで交付されるものを学術研究助成基金助成金として、区別するようになった。さらに、2013年度からは、科学研究費補助金においても調整金の枠が設けられ、補助金の前倒しや繰り越し使用ができるように変更された。また、2015年度には第一線の研究者の海外における共同研究支援などをおもな目的とする国際共同研究加速基金が創設された。

 科研費は学術研究における日本最大の助成金制度である反面架空取引で得た資金を業者に管理させる「預け金」や、実体の伴わない旅費を支払わせる「カラ出張」など、研究者による着服や不正使用が長く問題視されてきた。2015年には大阪大学大学院で、2002年から10年以上にわたり、2億円を超える研究費が私的に流用されたり、預け金としてプールされていたことが発覚した。2013年4月に公表された国公立61大学に対する文部科学省の調査によると、2008~2011年度に科研費等にかかわる不適切な経理が行われた大学は19あり、その総額は1億7200万円に上る。また、研究期間の最終年度末に研究費の3割以上に相当する額を支出した大学が14、同時期に高額機器や多数のパソコン等を購入した大学が4と、補助金を使い切るためにむだ使いされたと考えられるケースもあった。こうしたなか、大学事務局のチェック機能だけでなく、使われなかった科研費を返還する仕組みのあり方が問われており、不正使用者の応募資格停止などの罰則強化とあわせて、資金の使用方法や使用期間などについて改善を図る「経費執行の弾力化」も進められている。

[編集部 2016年9月16日]

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