日本大百科全書(ニッポニカ) 「秩父中・古生層」の意味・わかりやすい解説
秩父中・古生層
ちちぶちゅうこせいそう
Chichibu Paleozoic and Mesozoic formations
日本列島の骨格をなしている古生代シルル紀から中生代ジュラ紀(約4億4000万~1億4300万年前)にわたる地層。砂岩、泥岩、石灰岩、チャート(珪岩(けいがん))などの海成堆積(たいせき)岩および海底で噴出した火山岩(おもに玄武岩質溶岩・凝灰岩など)からなる。その一部は中生代後期に変成作用を受け、三郡変成岩、領家(りょうけ)変成岩、三波川(さんばがわ)変成岩などとよばれている。
本層は中生代白亜紀の造山運動により、褶曲(しゅうきょく)したり断層によって切られたりしている。また各地で白亜紀の花崗(かこう)岩の貫入を受けている。本層は飛騨片麻岩(ひだへんまがん)などとともに日本列島の基盤をなすが、各所でより新しい地層に不整合で覆われているため、その分布は主として火山以外の山岳地域に限られている。かつては古生代の地層だけからなると考えられ「秩父古生層」とよばれていたが、1970年ごろから1ミリメートルより小さい微化石であるコノドントが発見され、中生代三畳紀のチャートが多く含まれていることが明らかになった。1980年代にはさらに小さい放散虫が各地のチャートや泥岩から続々と発見され、中生代ジュラ紀の地層が多く含まれていることがわかった。これらの地層の多くはジュラ紀付加堆積物であるが、ペルム紀付加堆積物も含まれている。本層は、埼玉県秩父地方の西の山地に広く分布していて、日本の古生層の研究はそこで始まった。
[吉田鎮男・村田明広]