コノドント(読み)このどんと(英語表記)conodonts

日本大百科全書(ニッポニカ) 「コノドント」の意味・わかりやすい解説

コノドント
このどんと
conodonts

謎(なぞ)の多い動物の微小な部分化石。1856年にロシアの古生物学者パンダーC. H. Pander(1794―1865)が、バルチック地方の地層から初めて報告した。その分類上の位置については多くの議論がなされてきたが、今日でもなお意見が分かれている。1983年、1986年そして1993年、スコットランドに分布する石炭紀の頁岩(けつがん)から、頭部にコノドント集合体をもつ動物化石が発見された。それらはウナギのような細長い胴と脊索(せきさく)と考えられる組織をもち、コノドント動物とよばれている。コノドント動物を無顎(むがく)類とする考えと、無顎類とは別の動物であるとする見解がある。

 コノドントの大きさは200マイクロメートルから3ミリメートル程度で、おもな成分はリン酸カルシウムである。外形から、角(つの)のような単歯型コノドント、複数の角が並んで櫛(くし)のような複歯型コノドント、そして板状のプラットホーム型コノドントに分けられている。歯の付け根にあたる基底部には、窪(くぼ)みがあり基底腔(こう)とよばれる。保存のいい個体では、基底腔に基底板とか基底充填(じゅうてん)物がついている。コノドントの薄片を顕微鏡下で観察すると、成長のあとを示すと考えられる石灰質薄層の年輪状構造が認められる。古生代カンブリア紀から中生代三畳紀までの、さまざまな海成堆積(たいせき)岩から産し、地層を対比するうえで有効な化石である。

[谷村好洋]

『日本化石集編集委員会編『日本化石集6 千葉県房総半島の新第三紀・第四紀超微化石』『日本化石集7 山口県秋吉石灰岩の石炭紀コノドント化石』(1977・築地書館)』『猪郷久義著『古生物コノドント――四億年を刻む化石』(1979・日本放送出版協会)』『速水格・森啓編『古生物の科学1 古生物の総説・分類』(1998・朝倉書店)』

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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