突然昇温(読み)とつぜんしょうおん(その他表記)sudden warming

改訂新版 世界大百科事典 「突然昇温」の意味・わかりやすい解説

突然昇温 (とつぜんしょうおん)
sudden warming

冬から春にかけて,成層圏の極夜渦を形成している偏西風帯中で気温が急激に上昇する現象。この現象は高緯度ほど顕著である。気温上昇の大きさは,ふつう1週間に数十℃であるが,時には1週間に70℃以上,あるいは1日で30℃以上におよぶこともある。昇温は上部成層圏から始まり,下部成層圏へと伝わる。この昇温に伴って,典型的な場合には,成層圏循環に次のような変化が生ずる。冬季の成層圏循環を特徴づける極夜渦が崩壊を始め,二つの低気圧に分裂して南下する。一方,昇温域は北上し,北極高温域の中心となり,ここに高気圧ができる。この結果,帯状流が西風から東風に変わる。つまり,冬型循環から夏型循環に変わるわけである。真冬に起こる突然昇温midwinter warmingの際,上述のような変化をして一時夏型循環になり,再び冬型循環に戻る場合,この突然昇温をmajor warmingという。循環の逆転を伴うまでには至らないが,1週間またはそれ以下の期間に25℃以上昇温する場合はminor warmingという。春になって成層圏循環が冬型から夏型に移行する際も,突然昇温によって導かれるのがふつうで,これを最終昇温final warmingという。突然昇温の発生は,対流圏からのプラネタリー波伝搬に起因しているといわれている。突然昇温時には,しばしば対流圏でブロッキング現象がみられ,突然昇温とブロッキング現象関連が深いと考えられている。南半球でも突然昇温の現象がみられる。
成層圏循環
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「突然昇温」の意味・わかりやすい解説

突然昇温
とつぜんしょうおん

大気上層の成層圏内でおこる現象。高緯度地方で冬の終わりごろから春にかけて気温が急激に昇り、数日間で40Kの上昇をみることもあり、成層圏突然昇温ともよばれている。条季の昇温時には赤道域より高緯度のほうが高温となる。夏から冬に向かう時期にはみられない。南半球ではこの現象はおこらない。1952年にドイツのシェルハーグR. Sherhagが発見した。

[大田正次]

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百科事典マイペディア 「突然昇温」の意味・わかりやすい解説

突然昇温【とつぜんしょうおん】

高緯度の成層圏において,冬から春にかけて広域にわたって急激に気温の上がる現象。対流圏の波動が引き金になって南北の温度傾度が逆転し温度上昇をもたらす。

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