立ち所（読み）タチド

デジタル大辞泉

たち‐ど【立ち^▽所／立ち^▽処】

１ 立っている所。たちどころ。
「五月山木の下やみにともす火は鹿の―のしるべなりけり」〈貫之集〉
２ 物のあるべき所。置くべき所。
「書きたるさま筆の―も知らぬやうなるに」〈浜松・五〉

たち‐どころ【立ち所】

立っている所。たちど。
「六波羅の門前には馬車の―もなくせきあひたるに」〈古活字本平治・上〉

出典　小学館

精選版 日本国語大辞典

たち‐どころ【立所・立処】

1. 〘 名詞 〙
2. ① ＝たちど（立所）①〔書陵部本名義抄（1081頃）〕
   1. [初出の実例]「六はらの門前には、馬車のたち所もなくせきあひたるに」(出典：平治物語（1220頃か）上)
3. ② 主張や考えのよって立つ所。よりどころ。
   1. [初出の実例]「或は自見、或は立所もなき人の申に付て、歌も連歌も仕べき事は押義歟」(出典：師説自見集（1408）下)
4. ③ ( 形動 ) 時をおかずに事がなるさま。またたく間のこと。→たちどころに。
   1. [初出の実例]「つは者をおこし、呉をせめられんに、かつ事、立所なるべし」(出典：曾我物語（南北朝頃）五)

たち‐ど【立所・立処】

1. 〘 名詞 〙
2. ① 立っている所。立っている足元。また、住んでいる場所。たちどこ。たちどころ。
   1. [初出の実例]「青柳の張らろ川門に汝を待つと清水(せみど)は汲まず多知度(タチド)ならすも」(出典：万葉集（８Ｃ後）一四・三五四六)
   2. 「五月山木の下やみにともす火は鹿のたちどの知るべなりけり」(出典：貫之集（945頃）一)
3. ② 筆の運び、足の運びなどのきちんとした姿。それらの動きのあと。
   1. [初出の実例]「霞にたちこめられて、筆のたちどんしられねば」(出典：蜻蛉日記（974頃）下)
4. ③ そのものの占める地位、立場。たちどこ。

たち‐どこ【立所・立処】

1. 〘 名詞 〙
2. ① ＝たちど（立所）①
   1. [初出の実例]「命惜しさに鎌倉を駈落なし、居所立所(タチドコ)に迷はっしゃらうが」(出典：歌舞伎・忠臣蔵後日建前（女定九郎）（1865）下)
3. ② ＝たちど（立所）③
   1. [初出の実例]「これほど気をもむのを、向ふでも察してくれねへじゃあ、おいらの立処(タチドコ)がねへ」(出典：人情本・春色梅児誉美（1832‐33）三)

出典　精選版 日本国語大辞典