デジタル大辞泉
「立返り」の意味・読み・例文・類語
たち‐かえり〔‐かへり〕【立(ち)返り/立(ち)帰り】
[名]行ってすぐに帰ること。
「―にもと思へども、おのづから日頃経ることも」〈浜松・二〉
[副]
1 折り返してすぐに。手紙などを受け取ってすぐに返事を返すさま。
「御返しに…鳥の声は孟嘗君のにやときこえたれば、―、孟嘗君のにはとりは…とあれば」〈枕・一三六〉
2 繰り返し何度も。
「―泣けども我は験なみ思ひわぶれて寝る夜しそ多き」〈万・三七五九〉
3 もとの時点に戻って。
「梅の匂ひにぞ、いにしへのことも―恋ひしう思ひ出でらるる」〈徒然・一九〉
出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例
Sponserd by 
たち‐かえり‥かへり【立返・立帰】
- [ 1 ] 〘 名詞 〙 ( 「たちがえり」とも )
- ① 行ってすぐに帰ること。
- [初出の実例]「たち返りにもと思へども、おのづから日頃経る事も侍りなん」(出典:浜松中納言物語(11C中)二)
- 「まゐらでひさしくなりにければれいのいとまなくてたちかへりもえおぼしたらぬに」(出典:有明の別(12C後)二)
- ② 中世、庄園の人夫役の一種。長く行先に逗留しないで帰る人夫役。
- [初出の実例]「又立帰と申人夫は」(出典:菅浦文書‐寛正四年(1463)九月二日・近江大浦下庄百姓申状)
- ③ 返歌。返書。かえりごと。
- ④ 悪い状態からもとの良い状態に戻ること。立ち直り。
- [初出の実例]「此息子どのは、能う立(タ)ちかへりが出来たものでござります」(出典:鳩翁道話(1834)二下)
- ⑤ 再び現れること。よみがえること。
- [初出の実例]「時間は僕らの意識の面を、体験の記憶の立返りを通して拡がって行くからである」(出典:『フロス河畔の水車場』(ジョージ・エリオット)(1951)〈中村真一郎〉)
- [ 2 ] 〘 副詞 〙
- ① 繰り返し。ひっきりなしに。
- [初出の実例]「多知可敝里(タチカヘリ)泣けども吾はしるし無み思ひわぶれて寝る夜しそ多き」(出典:万葉集(8C後)一五・三七五九)
- 「わたつみのわが身こす浪立ちかへりあまのすむてふうらみつるかな〈よみ人しらず〉」(出典:古今和歌集(905‐914)恋五・八一六)
- ② おりかえしてすぐに。手紙などを受け取って、すぐに返事を返すさま。
- [初出の実例]「なほ、あれこと心有りと聞きたるにやと、くるしうて、立帰、さればよ。〈略〉との給へれば」(出典:落窪物語(10C後)二)
- ③ 今までとは逆に。反対に。
- [初出の実例]「さまざま、なごりをしむときくほどに、たちかへり、うれしや水とはやす」(出典:弁内侍日記(1278頃)寛元五年一一月一八日)
- ④ 昔あったことを回想し、当時にもどったように改めて強い感情が生じるさま。
- [初出の実例]「いかに我をくちをしくおぼしけんなど、又立帰かなしくて」(出典:苔の衣(1271頃)四)
出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例
Sponserd by 