筋緊張症(読み)きんきんちょうしょう(せんてんせいきんきょうちょくしょう)(英語表記)Myotonia (Myotonia congenita)

六訂版 家庭医学大全科 「筋緊張症」の解説

筋緊張症(先天性筋強直症)
きんきんちょうしょう(せんてんせいきんきょうちょくしょう)
Myotonia (Myotonia congenita)
(運動器系の病気(外傷を含む))

どんな病気か

 筋強直を来す遺伝性の病気です。筋萎縮(いしゅく)は伴いません。筋強直とは筋肉収縮が過度に持続し、円滑(えんかつ)弛緩(しかん)しない状態をいいます。

原因は何か

 骨格筋クロルチャネル遺伝子(CLCN1)の異常による遺伝子の病気です。常染色体優生遺伝の場合はトムゼン病常染色体劣性遺伝の場合はベッカー病に分類します。

症状の現れ方

 乳児期から筋肉が強直しているため、まぶたが開きにくい、握った手がすぐに開けられないことで気づきます。筋強直は、全身とくに四肢、体幹筋に広範に認められます。筋強直の強いものでは筋肥大が認められ、ヘラクレス体型と形容されますが、筋力は強くありません。

 筋力低下は通常みられず、骨格筋を叩打(こうだ)(筋肉を叩く)すると強直が誘発され、また精神的緊張で増悪します。

 ベッカー型のほうが症状はやや強く、20代に最も重くなります。筋弛緩後の随意収縮で筋強直が生じやすく、3~4回収縮させると筋強直は軽快し、ごく短時間しか筋力低下は生じません。

検査と診断

 臨床的には乳児期から筋強直があり、筋萎縮筋強直性ジストロフィー症における多系統臓器障害(白内障糖尿病、心伝導障害など)の合併症がないことで「先天性筋強直症(せんてんせいきんきょうちょくしょう)」を疑います。筋電図で特徴的なミオトニー放電や急降下爆撃音に似た音がすることから筋強直を確認します。

 遺伝子検査でCLCN1遺伝子の変異を確認し、診断を確定します。

 筋緊張を来す疾患として、筋萎縮を伴う筋強直性ジストロフィー症、筋強直が寒冷で増悪し、弛緩性四肢麻痺エピソードがある先天性パラミオトニー、神経原性に生じるシュワルツ・ヤンベル症候群を鑑別する必要があります。

治療の方法

 非進行性疾患であり、通常、治療は要しません。症状が著しい時には薬物療法が行われます。合併症はほとんどなく、予後は良好です。

病気に気づいたらどうする

 神経、筋を専門とする医療機関を受診してください。

藤井 正司

出典 法研「六訂版 家庭医学大全科」六訂版 家庭医学大全科について 情報

家庭医学館 「筋緊張症」の解説

きんきんちょうしょうみおとにーしょうこうぐん【筋緊張症(ミオトニー症候群) Myotonia】

[どんな病気か]
 いったん筋肉を収縮させると(縮めると)、なかなか弛緩(しかん)できない(ゆるめられない)状態をミオトニーといいます。たとえば、物を握ると、なかなか手を開いてはなすことができません。このミオトニーをおもな症状とする疾患群には、つぎのような病気があります。
■トムゼン病
 7番染色体にあるクロライドチャンネル遺伝子の異常で発症する病気で、常染色体優性遺伝(じょうせんしょくたいゆうせいいでん)します。
 ミオトニーの症状がはっきり現われます。また、筋肉が発達し、ヘラクレスのような体型になります。幼児期に発症するものですが、中年以降に多少の筋力の低下が残ります。
■ベッカー病
 トムゼン病と同じ遺伝子の異常でおこり、常染色体劣性遺伝(じょうせんしょくたいれっせいいでん)します。症状もトムゼン病と同じですが、ベッカー病のほうが筋力の低下が強いといわれています。
■パラミオトニー
 17番染色体にあるナトリウムチャンネル遺伝子の異常でおこります。
 ミオトニーのほかに、寒冷時に脱力がみられます。高(こう)カリウム血性周期性四肢(けつせいしゅうきせいしし)まひ(「周期性四肢まひ」)と同じ病気と考えられています。
その他
 子どものころに発症するシュワルツ・ジャンペル症候群が知られています。
 先天性のミオトニーが一症状ですが、日本では少ないようです。
[検査と診断]
 筋電図検査を行なうと、どの病気にもミオトニー放電がみられます。正確な診断には遺伝子検査が必要ですが、日本ではまだできません。
[治療]
 抗けいれん薬のフェニトインや抗不整脈薬の塩酸プロカインアミドが使用されますが、さほど効果はありません。

出典 小学館家庭医学館について 情報

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