宿泊する場所や設備を多数の人が共同で使用する有料の宿泊施設。簡易宿泊所ともよばれ、簡宿と略す。旅館業法(昭和23年法律第138号)では旅館業を、(1)ホテル営業、(2)旅館営業、(3)簡易宿所営業、(4)下宿営業の4種に規定している。簡易宿所の具体例としては、民宿、ペンション、山小屋、カプセルホテルなどが該当する。2014年度(平成26)末において、旅館業の営業許可を受けた7万8898施設のうち、簡易宿所は2万6349施設を占めている。
1960年代を中心とする高度成長期に、建設現場などでの日雇い仕事を求め、都市部へ集まってきた労働者のための宿泊所として急成長した。とくに山谷(さんや)地域(東京)やあいりん地区(大阪、旧称釜ヶ崎(かまがさき))などには、多数の簡易宿所ができ、簡宿街(通称ドヤ街)とよばれる密集地が形成された。東京都の調査によれば、1960年代なかばの最盛期には、山谷地域で約220軒の簡易宿所に1万5000人を超える日雇い労働者が宿泊していたが、近年は宿泊者はその3分の1程度、簡易宿所数は約7割にまで減少している。現在、長期滞在者の多くは高齢者で、また、これら利用者の8割以上が、生活保護を受給する状況にある。
簡易宿所のなかには、建築基準法に違反していたり、防火対策が十分でなかったりする建物もあるが、燃えにくい鉄筋コンクリートに改築するなどの対策を行うには多額の改修費用がかかるため、廃業に追い込まれる簡易宿所が多いと見込まれる。そのため、利用する生活保護受給高齢者の行き先を含めた対策が必要とされる。
[編集部]
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