日本大百科全書(ニッポニカ) 「ペンション」の意味・わかりやすい解説
ペンション
ぺんしょん
日本独特の「洋風民宿」とでもいうべき低料金宿泊施設のこと。「ペンション」という語は「ビジネスホテル」同様和製英語で、英語で「business hotel」といえばビジネス向けのホテルのことかと通じるが、「pension」は「年金」を意味する。ただし、同じつづりで「パンシオン」と発音されるフランス語は、日本でいう民宿のような食事付きの小規模宿泊施設のことである。日本のペンションは、ヨーロッパに多いこの種の家族経営の宿泊施設にヒントを得て開発された。1969年(昭和44)に群馬県草津で開業した綿貫(わたぬき)ペンションが最初で、パンシオンでは発音しにくいため、年金を意味することは承知のうえでペンションの表記が採用された。ペンションは、旧国鉄の「ディスカバージャパン」キャンペーンに続く国内観光ブームの追い風を受けて、1970年代に急速に普及した。
民宿と比べた場合の特色は、施設が新しく洋式であること、夫婦などによる家族労働が主であるが民宿のような副業としての兼業ではなく専業であり、季節営業ではなく通年営業であること、さらに、豊かな自然環境にあこがれる都市のサラリーマンが転職して経営者となるケースが多いこと、などである。ペンションの多くは長野県に集中しており、有名観光地の周辺や自然環境に恵まれた高原などに立地し、スキーやテニスなどのスポーツに便利である場合が多い。料金制度は1泊2食付きの旅館形式で料金水準は旅館と民宿の中間に位置する。旅館業法上の営業の種類としては、洋式の施設が多いことからホテル営業として申請し許可を受けたものが多い。かつては20代の女性の小グループでにぎわったが、若い女性の旅行離れといった背景もあり、ペンションの経営は難しさを増している。
なお、ペンションがこれまでの2食付き料金制度を朝食だけの1食付き料金制度に変更すれば、英国起源の観光客向け宿泊施設として、アメリカでも普及し、日本でも普及の兆しがあるB&B(Bed & Breakfast)とよばれる宿泊施設となる。
[岡本伸之]