粘液嚢腫(読み)ねんえきのうしゅ(英語表記)Mucous cyst

六訂版 家庭医学大全科 「粘液嚢腫」の解説

粘液嚢腫
ねんえきのうしゅ
Mucous cyst
(皮膚の病気)

どんな病気か

 同じ病名で呼ばれる2つの異なる病気があります。ひとつは手足の指にできる指趾(しし)粘液嚢腫で、爪の付け根近くの皮膚に生じる半透明しこりです。

 もうひとつは口腔粘膜(こうくうねんまく)粘液嚢腫で、主に下唇粘膜側に生じる半透明のしこりです。いずれも内部にゼリー状の粘液が入っています。

原因は何か

 指趾粘液嚢腫は、関節内の潤滑剤である滑液(かつえき)周囲組織内に漏れ出た結果、皮膚に貯留し嚢腫を形成したものと考えられます。

 一方、口腔粘膜粘液嚢腫は、外傷により小唾液(だえき)腺(唾液をつくる小さな組織で、口のなかにはあちこちに多数ある)の導管(唾液を運ぶ管)がふさがり、内容物がたまって生じます。

症状の現れ方

 指趾粘液嚢腫は手足の指の背面(爪と同側)で、爪の付け根とDIP関節(指の先端から数えて一番目の関節)との間に生じます。大きさは数㎜~1㎝程度で半透明のドームのように盛り上がったしこりです(図87)。DIP関節背面に生じ、皮膚の表面に変化のないしこりは、本体は粘液嚢腫と同じですが、ガングリオンと呼ばれることもあります。

 口腔粘膜粘液嚢腫は下唇の裏側の粘膜に発生しやすく、透明感のあるドームのように盛り上がったしこりをつくります(図88)。表面は白くふやけていることも多いのですが、逆に周囲よりも赤く見える場合もあります。

検査と診断

 通常、見た目診断できます。穿刺(せんし)(針を刺す)すればゼリー状の粘液が排出されます。

治療の方法

 診断が確定していれば、放置しておいて差し支えありません。指趾粘液嚢腫は自然に治る傾向がほとんどないため、治療の希望があれば外科的に切除します。しかし、口腔粘膜粘液嚢腫は自然に消えていくことがまれでないため、無治療で経過観察するのもよい方法です。早く治したい場合には切除します。

病気に気づいたらどうする

 皮膚科専門医を受診し、診断を確定したうえで、治療するかどうかを相談してください。

関連項目

 ガングリオン

田村 敦志


出典 法研「六訂版 家庭医学大全科」六訂版 家庭医学大全科について 情報

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