紅屋(読み)べにや

精選版 日本国語大辞典 「紅屋」の意味・読み・例文・類語

べに‐や【紅屋】

〘名〙
① べにを染料として、染色する店。また、その人。
※俳諧・紅梅千句(1655)三「護摩の火を灰汁たくやうにくゆらかし〈正章〉 紅粉(ベニ)屋をせしも今は油屋安静〉」
化粧品のべにを売る店。また、その人。江戸では本町二丁目角の玉屋で売る玉屋紅が第一といわれた。
※雑俳・柳多留‐三六(1807)「天人へ売る気か紅や空へ出し」

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改訂新版 世界大百科事典 「紅屋」の意味・わかりやすい解説

紅屋 (べにや)

紅やおしろいなど化粧品を売る店をさす江戸時代の呼称。15世紀のころの京都には,店売の女性の紅粉解(べにとき)がいて,泥状の艶紅(つやべに)を紅皿に解いたものをほお紅用として売っていた。また口紅用の固紅もあった。17世紀になって,紅屋が京や大坂,江戸にでき,大坂,江戸へは京の紅問屋から卸売された。18世紀には江戸,大坂にも問屋ができ,京都製の紅のほか,おしろいなどそれぞれ独自の製品も卸していた。化粧法が口紅中心となるにしたがって,乾燥させた移紅(うつしべに)(皿紅,ちょこ紅)が売られるようになった。近代になって問屋は板紅の懐中紅,香水のほか食品を着色する細工紅も取り扱うようになり,小売専門の紅屋は小間物屋や化粧品店に吸収された。
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