油屋(読み)アブラヤ

日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

油屋
あぶらや

油の卸売り、小売りの商人。油は灯油(とぼしあぶら)のことで、古代から使われていたが、その需要が増して専門の生産者や販売者が現れたのは中世からで、近世を通じてつねに欠かせないものであった。ただ原料は、中世のゴマ、エゴマなどから、近世ではナタネ(菜種)、綿実となった。菜種油を種(たね)油・水油、綿実油を白(しろ)油、種油・白油と魚油(ぎょゆ)を除いた胡麻油・荏(えの)油・榧(かや)油を色油といっていた。中世の油は畿内(きない)や各地の油座によって生産と販売が独占されていた。その販売人が行商の油売りである。原料購入と生産、問屋と小売りは14世紀には分化していた。近世では油座の役割は失われ、新しく大坂を中心とした流通形態が生まれた。油問屋である。17世紀には京その他と江戸へ出荷するものとの二つがあった。18世紀には生産者の絞(しぼり)油屋(人力絞りと水車絞り)に原料をあてがう両種物問屋、在方の絞油屋の出店の出(で)油屋が大坂以外の各地からの絞油の荷受けをした。また、油問屋から水油・白油を買い受けて調合した灯油や加工した髪油をつくる油仲買も生まれた。小売りの油屋はこうした問屋から仕入れたもので、行商の油売りも依然として存在した。江戸では下り油が主で、その問屋によって集荷されていたが、18世紀からは地廻(じまわり)油問屋ができ関東産の地油を取り扱い(関東にも絞油屋が出現)、小売りの油屋や油売りに買い取らせた。油売りは三都とも、曲物(まげもの)の桶(おけ)を天秤(てんびん)で担ぎ、藍(あい)木綿の着物に渋染めの胸前垂(まえだれ)をしていた。

[遠藤元男]


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精選版 日本国語大辞典の解説

あぶら‐や【油屋】

[1] 〘名〙
① 灯油など、油を製造したり、売ったりする家。また、その人。〔日葡辞書(1603‐04)〕
② 髪油を売る店。また、その人。油店(あぶらみせ)
※雑俳・さざれ石(1730)「鳥甲(とりかぶと)まづ鬢付屋(アブラや)の詠(なかめ)あり」
※東京風俗志(1899‐1902)〈平出鏗二郎〉中「四五歳に至るまでは、衣の汚れを防ぐが為めに、油屋(アブラヤ)と称へて、胸当と前掛とを併せたるが如きものを着けしむるもあり」
④ 文楽の人形の動作の型。老人の人形によく用いられ、相手をからかう気持を表わす軽妙な動作をいう。「義経千本桜」のすし屋で彌左衛門、「菅原伝授手習鑑」の佐太村で白太夫が演ずる型など。
[2] 歌舞伎の「伊勢音頭恋寝刃」の第三幕の通称。この場を常磐津節にした曲の通称にも用いる。

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