玉屋(読み)タマヤ

デジタル大辞泉 「玉屋」の意味・読み・例文・類語

たま‐や【玉屋】


2㋐をつくったり売ったりする店。また、その人。
江戸時代シャボン玉を売った人。
花火製造元の屋号江戸時代、鍵屋かぎやと並称され、その花火は両国川開き名物だった。

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精選版 日本国語大辞典 「玉屋」の意味・読み・例文・類語

たま‐や【玉屋】

[1] 〘名〙
① 玉をつくったり売ったりする家。また、その人。たまつくり。たますり。
※七十一番職人歌合(1500頃か)三九番「軒の露玉屋の月の影みればみがかずとてもことたりぬべし」
② シャボン玉を売る人。《季・春》
清元・おどけ俄煮珠取(玉屋)(1832)「さあさあ寄ったり見たり吹いたり評判の玉や玉や」
[2]
[一] 江戸時代、花火製造元の一つ。文化(一八〇四‐一八)頃、鍵屋の番頭清七が分家し創業。その花火は、同業の鍵屋とともに江戸、両国の川開きで人気があったが、天保一四年(一八四三失火により廃絶。転じて、花火のあがるときのほめことばとしても用いる。
※談義本・興談浮世袋(1770)三「玉屋(タマヤ)玉屋の人声には、雷も耳をふさぐ」
[二] 江戸の新吉原江戸町一丁目(東京都台東区千束四丁目)にあった遊女屋。「角の玉屋」ともいう。
※洒落本・通言総籬(1787)一「竹屋の水貝しづか玉屋のゑましむぎ」
[三] 歌舞伎所作事。清元。二世瀬川如皐作詞。初世清元斎兵衛作曲。三世藤間勘十郎振付。天保三年(一八三二)江戸森田座初演。四世中村歌右衛門の四変化舞踊「おどけ俄煮玉取(おどけにわかしゃぼんのたまとり)」の一つ。当時流行していた夏のシャボン玉売りを舞踊化したもの。

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改訂新版 世界大百科事典 「玉屋」の意味・わかりやすい解説

玉屋 (たまや)

歌舞伎舞踊曲名。清元。本名題《おどけ俄煮珠取(おどけにわかしやぼんのたまとり)》。1832年(天保3)7月江戸中村座で4世中村歌右衛門初演。作詞2世瀬川如皐(じよこう)。作曲初世清元斎兵衛。振付2世藤間勘十郎。玉に縁のある四変化物として作られたうちの一。玉屋とは当時流行した〈しゃぼん玉売〉のこと。夏になると日傘をさし,しゃぼん玉を吹きながら子ども相手に〈玉屋,たまや〉と触れながら売り歩いた風俗を舞踊化した,軽妙洒脱な曲。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「玉屋」の意味・わかりやすい解説

玉屋
たまや

歌舞伎舞踊曲。清元。本名題『おどけ俄煮玉取 (にわかしゃぼんのたまとり) 』。2世瀬川如皐作詞,1世清元斎兵衛作曲。振付は2世藤間勘十郎ともいう。天保3 (1832) 年7月江戸中村座で,4世中村歌右衛門が『本朝丸艫舳稲妻』という狂言の大切 (おおぎり) に踊った四変化舞踊の一つとして初演。当時夏の市中を歩き回った流行の子供相手のしゃぼん玉売りに題材をとった,軽妙洒脱な清元の代表曲。にぎやかな祭りの鳴り物で幕が開くと,花道から「玉屋」と書いた箱を胸に吊るしたしゃぼん玉売りが出て,花道の七三で一振りして本舞台に入る。売立ての口上,玉尽し,三下がりの「蝶々とまれ」,眼目の郭ばなしのクドキ,当時流行のおどけ節と変化が多く,最後は祭りの鳴り物で幕となる。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「玉屋」の意味・わかりやすい解説

玉屋
たまや

江戸時代に花火の製造をした店。同業の鍵(かぎ)屋とともに、その花火は両国の川開きで名高かった。そこで、同店が絶えたのちも、その名が花火を褒めることばの呼称として用いられた。

[芳井敬郎]

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日本の企業がわかる事典2014-2015 「玉屋」の解説

玉屋

正式社名「株式会社玉屋」。英文社名「tamaya co., ltd.」。小売業。昭和12年(1937)創業。同25年(1950)株式会社化。本社は大阪市中央区心斎橋筋。婦人服専門店チェーン。若者向け衣料を中心に展開。主力ブランドは「ミッシュ マッシュ」「ロディスポット」「ハートダンス」など。

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歌舞伎・浄瑠璃外題よみかた辞典 「玉屋」の解説

玉屋
(通称)
たまや

歌舞伎・浄瑠璃の外題。
元の外題
おとけ俄者本珠取
初演
天保3.7(江戸・中村座)

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世界大百科事典(旧版)内の玉屋の言及

【花火】より

…大花火には〈しだれ柳〉〈大桜〉〈天下泰平の文字うつり〉〈流星〉〈ぼたん〉〈ちょう(蝶)〉〈ぶどう〉などがあり,見物人は両国橋界わいに集まるほか,屋形船を浮かべてこれを見物した。両国横山町の鍵(かぎ)屋,鍵屋から別家した両国吉川町の玉屋がその花火の製造元であった。 日本で花火の色彩が明確に現れはじめたのは,塩素酸カリウムが輸入されるようになってからで,1879年ころからといわれ,その後つぎつぎと新しい化学薬品が導入されるようになった。…

※「玉屋」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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