累進変成作用(読み)るいしんへんせいさよう(その他表記)progressive metamorphism

改訂新版 世界大百科事典 「累進変成作用」の意味・わかりやすい解説

累進変成作用 (るいしんへんせいさよう)
progressive metamorphism

一つの変成帯では連続的に低温から高温変成岩分布している。これは変成帯の中で変成作用温度条件が一定方向に向かって上昇しているためである。このような変成作用を累進変成作用という。累進変成作用は温度と圧力を軸としてとったグラフ上で一つの変成帯の温度・圧力の分布として示すことができる。つまり変成帯の各地点の変成岩の形成温度と圧力をプロットすれば累進変成作用を示すことになる。変成作用の物理的条件は変成帯の中で地域的に違っているので,累進変成作用の結果,一つの変成帯はいくつかの鉱物帯に分帯される。これを変成分帯という。累進変成作用を表す温度と圧力のグラフ上の曲線からいくつかの累進変成作用に分類することができる。これはまたその曲線がいくつかの変成相を横切ることから,変成帯の変成相系列を示すことにもなる。第1はヒスイ輝石-石英タイプ,第2はラン晶石-ケイ線石タイプ,第3は紅柱石-ケイ線石タイプの変成相系列で表される累進変成作用である。それぞれ高圧型変成帯,中圧型変成帯,低圧型変成帯でみられる変成作用である。
変成帯
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岩石学辞典 「累進変成作用」の解説

累進変成作用

温度の上昇に伴って行われる変成作用[Turner : 1938,渡辺編 : 1935].変成岩がその後引き続いた高度の変成作用によって別な変成岩に変化する作用をいい,変成作用の程度が次第に高くなる場合である.最後の変成作用で岩石がすべて改変されてしまえば,それ以前のことはわからなくなる.通常観察できる変成岩は個々の岩石の最高温度の状態を表すので,高温の変成岩が変成作用の初期に低温状態を経過したかどうかがわかるとは限らない.累進変成作用では一般に脱水反応を伴う[片山他 : 1970].変成帯の系列で形成される変成作用の程度が,変成の中心あるいは火成岩の接触部に向って強くなるような変成作用をいう.高変成度の地域の岩石は,低変成度の時期を通って順に高くなっている[Turner : 1938].

出典 朝倉書店岩石学辞典について 情報

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