変成岩が十分な広がりをもって分布する地帯。変成作用は地下深く地殻や上部マントルあたりの所に相当する温度や圧力条件で再結晶するプロセスなので,変成岩はふつう低温の変成岩から順に高温の変成岩へと帯状に分布する。このように帯状に分布する変成岩帯はたいていは巨大な断層や不整合面によって変成されていない堆積岩と接したり,花コウ岩などの火成岩体に接している。巨大な断層は非常に低い角度の逆断層であったり,水平方向の移動量の多い横ずれ断層であったりする。変成帯には広域変成帯,接触変成帯,ミロナイト帯(延性的剪断帯)がある。広域変成帯は造山帯の中心付近に非常に大規模に分布している。接触変成帯は貫入火成岩体の周囲数百mの幅で見られるにすぎない。一方,ミロナイト帯は動力変成作用によって形成され,幅は数十mから数十kmにおよぶ場合もある。長さは数百km以上におよぶ。
広域変成帯は都城秋穂によって高圧型変成帯(低温高圧型,高P/T型ともいう),中圧型変成帯(中間型ともいう),低圧型変成帯(高温低圧型,高T/P型)の三つのタイプに分類されている。それぞれ高圧型変成作用(またはヒスイ輝石-石英タイプ),中圧型変成作用(ラン晶石-ケイ線石タイプ),低圧型変成作用(紅柱石-ケイ線石タイプ)をうけた変成岩帯である。高圧型変成帯はおもにランセン石片岩相の変成岩から構成され,しばしばヒスイ輝石を産出する。この変成帯には特徴的に変成された超マフィック岩体や斑レイ岩体などが多く見られ,玄武岩,チャート,石灰岩,赤色泥岩も多い(いわゆるオフィオライトと呼ばれる岩石群を作る場合もある)。近年,高圧型変成帯を古い時代のプレートの境界と考える人が多くなった。これは高圧変成帯の圧力が高い,つまり地下深い状態で変成作用を受けたにもかかわらず変成温度が低いことから,この変成作用は海溝付近の地下で行われたと考えられるからである。一方,低圧型変成帯には数多くの花コウ岩体が貫入している。その一部は変成作用の後の時代に貫入したものであるが,多くは変成作用と同時期に貫入したと考えられている。低圧型変成帯は地殻の比較的浅い所で十分に高温(500℃以上)の状態で形づくられたと推定される。そこでもしそのまましだいに温度が地下深くなるにつれ上昇しつづければ,モホロビチッチ面(地殻とマントルの境)付近で花コウ岩マグマが発生するような温度になるかもしれない。中圧型変成帯は世界的には最も広く,かつ大規模に分布する。この変成帯は緑色片岩相,角セン岩相,グラニュライト相の変成岩から構成される。花コウ岩や斑レイ岩,超マフィック岩体もふつうに出現している。高圧型変成帯と低圧型変成帯は環太平洋の各地に互いに並走して分布していることが多い。そこでこのように並走する変成帯を〈対になった変成帯paired metamorphic belts〉と呼んでいる。〈対になった変成帯〉はかつての海溝と島弧の対に対応するものと考え,プレート境界で起こる一般的な現象と考える人もいる。
執筆者:鳥海 光弘
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広義には変成岩の分布する地域。これは単に地表面の区域だけではなく、地下にまで広がりをもつ三次元的空間である。いわゆる造山帯の内部には、結晶片岩や片麻(へんま)岩が分布する長大な地域がある。その広さは、たとえば日本の三波川(さんばがわ)変成帯では、長さ700キロメートル、幅50キロメートルに及ぶ。変成帯は、狭義にはこのような帯状の広域変成岩分布域をいう。これは、造山運動に伴って、地殻の一部に地温勾配(こうばい)の大規模な変化と、岩石の著しい変形とがおこったために生じたもの、と考えられている。変成帯は温度勾配の大小によって、いくつかの型に分類され、それぞれ特徴的な鉱物や岩石を産する。温度勾配が高い場合には、温度に対する圧力の比(P/T)が低く、紅柱石や菫青(きんせい)石のような比較的低圧で安定な鉱物が出現する。日本の領家(りょうけ)変成帯はこの典型的な例である。一方、温度に対して圧力が高い、つまりP/Tが大きい変成帯では、高圧で安定な鉱物、たとえば藍閃(らんせん)石、ひすい輝石、ローソン石、アラゴナイトなどが出現する。日本の三波川変成帯やアメリカ西海岸のフランシスカン変成帯がこの例である。前記二つの中間的な地温勾配の下では、藍晶石、ざくろ石、十字石などで特徴づけられる中間圧力型広域変成帯が形成される。イギリスのスコットランド高地やアメリカのアパラチア山脈の変成帯はこれの代表である。低圧型と中間型の変成帯には、大量の花崗(かこう)岩が貫入しているが、変成帯内部の温度分布と花崗岩の分布とは、直接には関係がないようにみえる。一方、高圧変成帯には花崗岩の貫入がみられず、かわって蛇紋岩が広く分布している。
環太平洋の造山帯では、しばしば、低圧型と高圧型の変成帯が造山帯の延長に平行に並走している。そして、後者が太平洋側にあり、前者がその内側に位置している。たとえば、西南日本では、中央構造線を境として、その外側つまり太平洋側に三波川高圧変成帯が、内側に領家低圧変成帯が分布している。このように、温度勾配の異なる二つの型の変成帯が並走する場合、これらを「対をなす変成帯」ということがある。
火成岩マグマの貫入に伴って、周囲に接触変成岩が生じた場合にも、その分布域を接触「変成帯」ということがある。
[橋本光男]
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