細蟹(読み)ササガニ

デジタル大辞泉 「細蟹」の意味・読み・例文・類語

ささ‐がに【×蟹/××蟹】

蜘蛛くも古名。また、蜘蛛の糸。
「あさぢが露にかかる―」〈賢木
[補説]上代「笹が根の」の意の「ささがねの」を、中古になって、音の類似から「ささ蟹」と解し、「ささ」が小さいの意に意識されて、生じた語か。

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精選版 日本国語大辞典 「細蟹」の意味・読み・例文・類語

ささ‐がに【細蟹・笹蟹】

  1. 〘 名詞 〙
  2. くも(蜘蛛)」の異名。また、くもの糸。ささがね。
    1. [初出の実例]「今しはとわびにしものをささがにの衣にかかりわれをたのむる〈よみ人しらず〉」(出典:古今和歌集(905‐914)恋五・七七三)
    2. 「風吹けばまづぞ乱るる色かはる浅茅が露にかかるささがに」(出典:源氏物語(1001‐14頃)賢木)
  3. さわがに(沢蟹)」の異名。
    1. [初出の実例]「万代へたるだうがめの、こうをならべしささがにや、ひふくのきたるかずかずは」(出典:御伽草子・猿の草子(室町末))

細蟹の語誌

( 1 )「我が背子が来べき宵なり佐瑳餓泥(ササガネ)の蜘蛛の行なひ今宵著しも」〔書紀‐允恭八年二月・歌謡〕の「ささがね」が古形で、これが上代の唯一例である。この歌が、「我が背子が来べき宵也ささがにのくものふるまひかねてしるしも〈衣通姫〉」〔古今‐恋四〕と枕詞の形で伝えられ、中古以降は「ささがに」の形で蜘蛛をさすようになり、さかんに歌に詠まれた。→ささがにの
( 2 )「ささがね」は「笹が根」「細小蟹」「泥(ささ)蟹」などと解する説があるが、中古以降の「ささがに」はもとの意味にこだわることなく、単に蜘蛛の異名とされた。

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