国指定史跡ガイド 「纒向古墳群」の解説
まきむくこふんぐん【纒向古墳群】
奈良県桜井市太田・東田・箸中にある古墳群。奈良盆地東南部に位置し、初期大和政権が成立した出現期の古墳群で、宮内庁が管理する箸墓(はしはか)古墳のすぐ近くにあり、纒向石塚古墳・ホケノ山古墳・纒向矢塚古墳・纒向勝山古墳・東田(ひがいだ)大塚古墳などからなる。墳丘は全長100m前後の前方後円形を呈し、後円部にくらべて前方部が低いのが特徴。築造時期は、土師器(はじき)の土器形式でいえば庄内式期から布留(ふる)式最古期、すなわち、弥生時代終末期から古墳時代前期初頭にかけてとされる。古墳の周濠からは農具・土木具、祭祀具、建築部材などが出土し、ホケノ山古墳には木材で構築した木槨(もっかく)部分の周囲に石を積み上げるという珍しい構造の埋葬施設があり、画文帯神獣鏡や鉄製武器などが副葬されていた。この古墳群の墳丘と相似形のものは九州から関東にあるが、この古墳群は規模も大きく、すでに大和地域の首長を中心とした政治連合ができあがっていたことを示唆する一方、周濠から出土した木製品、ホケノ山古墳の埋葬施設や銅鏃(どうぞく)、鉄鏃、刀剣類、画文帯神獣鏡といった副葬品の構成などは、定型化した前方後円墳には見られないもので、弥生時代終末期の墳丘墓とする意見もある。2006年(平成18)に国の史跡に指定された。纒向石塚古墳へは、JR桜井線巻向駅から徒歩約8分。