義務論(読み)ぎむろん(その他表記)deontology

翻訳|deontology

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「義務論」の意味・わかりやすい解説

義務論
ぎむろん
deontology

ギリシア語の deon (義務) と logos (学問) を組合せた造語。道徳理論においては,ある行為が正しいということを正当化する根拠として,義務論と目的論の2つの立場に大別される。行為の価値は,その行為そのものの価値によって判断されるのであって,ほかに還元されるものではないとするのが義務論であり,行為の価値はその行為がもたらす結果ないしは目的によって判断されるとする立場を目的論という。前者の立場の代表がカントであり,後者の立場は快楽主義功利主義に代表される。義務論の立場からすれば,たとえば「約束を守る」という行為が正しいのは,その行為そのものが義務だからであり,それが自分,あるいは社会にとってよい結果をもたらすからではない。そうでなければ,都合が悪くなれば約束を破ってもいいという帰結が生じてしまうからである。「正義はなされよ,よしや世界が滅ぶとも」というフェルディナンド1世の言葉はその意味で義務論の考え方を端的に表現している。近年では J.ロールズ正義論がこの立場からの社会的正義論を展開させている。

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世界大百科事典(旧版)内の義務論の言及

【義務】より

… 道徳的理論として義務の自律的正当化を行おうとする立場には古来,二つの対照的な傾向が看取される。一つは,義務をそれ独自の,他に還元されえない規範と考える義務論deontologyの立場で,もう一つは,行為の義務をそれが実現する結果,目的のよさによって決定され,目的への手段であるとみる目的論teleologyの見地である。後者は結果の内容とそれがだれに向けられるかによって,さらに快楽主義,利己(他)主義,功利主義等に分かれる。…

※「義務論」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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