aを定数とするとき、数xに対し、
x=ay……(1)
を満たす数yを、(aを底(てい)とする)xの対数といい、
y=logax……(2)
と書く(logは、対数を意味する英語logarithmを略した記号)。すなわち、(1)と(2)は同値である。このとき、xをyの真数という。たとえば、8=23,0.01=10-2であるから、それぞれ3=log28,-2=log100.01である。y=logaxは指数関数y=axの逆関数であり、aを1でない正の数とすれば、どんな正の数xに対しても、aを底とする対数yが一つだけ定まる。以下、底についてはa>0,a≠1、真数については正とする。1=a0,a=a1であるから、つねにloga1=0,logaa=1が成り立つ。また、α=logaA,β=logaBとすればA=aα,B=aβで、指数法則によりAB=aα・aβ=aα+βすなわちlogaAB=α+β、したがって
logaAB
=logaA+logaB……(3)
が成り立つ。同様にして
loga(A/B)
=logaA-logaB……(4)
pを任意の実数としてlogaAp=plogaAで、とくに、nを自然数として
が導かれる。これらの公式から、二つの正の数A、Bの積、商がそれぞれの対数の和、差を利用して求められる。また、正の数Aのn乗、n乗根がそれぞれlogaAのn倍、n分の1を利用して求められる。なお、異なる底をもつ対数の間には次の関係がある。
logaA=logbA/logba……(6)
このような計算を対数計算という。
10を底とする対数を常用対数という。常用対数については次のような計算ができる。
log102000
=log10(2×103)
=3+log102
log100.002
=log10(2×10-3)
=-3+log102
同じようにして、log102の値から、nを整数として2×10nの形の数の対数の値を求めることができる。一般に1≦x<10の範囲にあるxについて、log10xの値が与えられればx×10nの形の数の対数の値を求めることができる。この範囲にある数の常用対数の値の表が対数表である。たとえば対数表からlog103.14=0.4969が得られる。よって
log103140=3+log103.14
=3.4969
log100.0314=-2+log103.14
=.4969
これらの最後の形をみればわかるように、対数表から対数の値を求めるときは、3、のような整数部分と、4969のような小数部分に分けて扱うと都合がよい。前者を指標、後者を仮数とよぶ。指標は-nと同じ意味である。
対数を用いる計算例として
の値を求めてみよう。
よって x=0.9528
前述の最後でlog10xの値からxを求めるのに対数表を逆に用いてもよいが、このために、対数の値に真数の値を対応させた逆対数表、すなわちy=10x(0≦x<1)の値の表もつくられている。
長い間、対数計算は数値計算の労力を減らすのに役だってきたが、近年、コンピュータの発達によって、利用されることが少なくなった。数直線で、座標log10xの点にxと目盛ったものを対数目盛りとよぶ。この目盛りを用いた方眼紙を対数方眼紙といい、実験式を求めたりするのに利用される。常用対数のほかに、eを底とする対数も広く用いられている。
[植竹恒男]
aを1でない正の数,xを任意の正の数とすると,au=xとなる実数uが定まる。このuを〈aを底(てい)とするxの対数〉といい,u=logaxと書く。またこのとき,xをuの真数という。aを定めて,xの値に対するlogaxの値を与える数値表を対数表という。対数の基本的な性質としては,
loga1=0,logaa=1 ……(1)
logaxy=logax+logay ……(2)
loga(x/y)=logax-logay ……(3)
logaxp=plogax(pは任意の実数) ……(4)
対数表によってx,yの対数logax,logayを求め,和logax+logay=logaxyを計算して,対数表を逆に引くことによりlogaxyの真数xyを求めることができるから,真数の乗法が対数表によって対数の加法で置き換えられる。同様に,(3)により除法が減法で置き換えられ,(4)により累乗,または累乗根を求める計算がそれぞれ乗法,除法で置き換えられる。
対数が史上に登場したのはこのような実用上の目的による。ビュルギJobst Bürgi(1552-1632)は1603-11年の間に対数表を作り,20年にそれを刊行した。それとは無関係に,J.ネーピアも1617年に対数表を公表し,これが対数の初めといわれる。
ふつうの記数法は十進法によるので,実用上の計算には10を底とする対数を用いるのが便利である。この対数を常用対数common logarithmと呼び,初等数学では底10を省略してlogxと書く。このとき公式(1)によりlog10=1となる。x≧1であってxの整数部分がn+1桁(n≧0)の数ならば,x=10nx′,1≦x′<10と書けるから,logx=n+logx′,0≦logx′<1となる。また,0<x<1であって,xの小数第n位に初めて0でない数字が現れるならば,x=10n′x′,n′=-n,1≦x′<10と書けるから,logx=n′+logx′,0≦logx′<1となる。上記のn(x≧1の場合),またはn′(0<x<1の場合)を対数logxの指標といい,logx′を仮数という。すなわち,1≦x′<10なるx′に対する常用対数の表から,その対数(すなわち仮数)を求めれば,それにxの桁数から定まる整数n,またはn′(すなわち指標)を加えることにより,xの対数が得られる。常用対数表はこの原理によって作られ,1794年にベガG.Vegaによって完全なものとされた。
しかし,数学の理論においては,
を底とする対数logexが用いられる。この対数を自然対数natural logarithmと呼んで,これを単にlogxで表すが,lnxとも書かれる。自然対数と常用対数との関係は,ただし,である。
→指数関数 →指数法則 →対数関数
執筆者:伊藤 清三
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