講談の作品名。《面打源五郎》ともいう。代表的な名人伝の一つ。元禄のころ,彫刻(ほりもの)師源五郎は能面にかけては江戸随一の名工だったが,酒に溺れて腕が落ち,暮れに迫っての金欲しさで作った般若の面を,名人観世太夫からはずかしめられ,恥辱にたえかねて自害した。源五郎の子の源之助は刻苦勉励,やはり評判の彫刻師となり,観世太夫は源之助に般若の面を打たせる。源之助の面をつけた観世太夫は源五郎の怨念か面がはりついてとれなくなり,源之助が手をかけるとようやくとれる。そのとき観世太夫の頰から血が流れ落ち,面の裏には血肉がベッタリとついていたという。これが肉付の面で,以来観世家の宝物となったといわれる。源之助は父の汚名をそそぎ,2代目源五郎となる。一席物としてよく演じられる。
なお,御伽草子の《磯崎》や昔話にも肉付面のモティーフがあり,そこでは本妻と妾,嫁と姑,継母と継子の葛藤が語られている。
執筆者:吉沢 英明
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
…室町時代の物語。作者未詳。下野国日光山麓に住む地頭磯崎は,所領問題のため妻を残して単身鎌倉に赴くが,若く美しい女を連れて帰る。妻は激しく嫉妬し,夫の不在に猿楽師より借り受けた鬼面を付け,杖を持って女をおどし,打ち殺してしまう。家に戻り,鬼面を取ろうとするが顔から離れず,杖も手から取ることができない。人目を避け,裏山に隠れるが,日光山の稚児学生(ちごがくしよう)の息子の懸命の説法によって,面と杖はようやく取ることができた。…
※「肉付の面」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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