肉離れ(読み)ニクバナレ

デジタル大辞泉 「肉離れ」の意味・読み・例文・類語

にく‐ばなれ【肉離れ】

筋肉筋線維部分的または完全に断裂し、種々の障害をきたした状態疾走・跳躍時に筋肉の急激な収縮によって起こることが多い。

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改訂新版 世界大百科事典 「肉離れ」の意味・わかりやすい解説

肉離れ (にくばなれ)

肉離れとは,骨格筋筋繊維局所的に断裂した状態である。骨格筋は,筋繊維という名前の細胞群と,それに付属する結合組織要素,それに血管,神経から構成されている。筋繊維は強力で迅速な収縮を行ったり緊張を保ったりすることができる。筋力が突然強く働いたり,あるいは筋肉が強く緊張しているときに直接外力が加えられると断裂が発生する。断裂は骨格筋のどの部位にも起こりうるが,筋腹に発生し,しかも比較的小範囲に限局していることが多い。一般に,筋肉の発達した男性労働者やスポーツ選手にみられる。疾走時に大腿四頭筋や腓腹筋を強く収縮させたり,重量物を急に持ち上げようとして上腕二頭筋を収縮させたときに発生する。強壮な男性では,筋肉を強力に使ったり外傷をこうむる機会が多いことや,筋繊維が発達している反面,柔軟性や伸展性が不足している場合が多いことなどが,肉離れが好発する理由である。

 肉離れが起こると,突然電撃様の鋭い痛みをおぼえ,直後からその筋肉が関係する四肢の運動は著しく制限される。筋繊維間には血管が豊富なので内出血のために血腫を形成する。断裂部には圧痛があり,断裂部が一定の範囲をこえると陥凹を外からふれるようになる。アキレス腱断裂,上腕二頭筋長頭腱断裂,大腿四頭筋の骨盤付着部からの剝離(はくり骨折,それにスポーツ選手の骨膜炎や疲労骨折との鑑別が必要となる。治療は,断裂部の組織損傷や血腫の拡大を防ぐために局所の安静が必要である。場合によっては,副木をあてて患肢を動かさないようにして,2~3日間は冷湿布を行う。次いで温湿布にかえて血行の改善と血腫の吸収をはかる。7~10日目からは安静を漸次ゆるめて軽い運動を許し,温浴マッサージを開始する。2週目ころからスポーツや労働に復帰させるが,完全に筋力が回復するには3週~1ヵ月が必要である。スポーツ選手の場合は,テーピングや断裂部への圧迫包帯が効果がある。肉離れの予防には,ストレッチングを組み入れた十分な準備体操を行い,筋肉の柔軟性,伸展性を保持しておくことや,筋肉の強い収縮を急激に行わないように気を配ることがたいせつである。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「肉離れ」の意味・わかりやすい解説

肉離れ
にくばなれ

骨格筋の筋線維が局所的に断裂した状態をいい、スポーツ外傷の一つとして知られる。ランニング、ジャンプ、スタート時など急に筋肉を強く収縮したり伸展した場合に発生する。短距離、ハードル、サッカーなどの選手では半膜様筋や大腿(だいたい)四頭筋など大腿部の筋肉に多くみられ、中・長距離選手では下腿三頭筋におこりやすい。

 筋腹の部分に突然電撃様の激痛がおこり、受傷部位に硬結を触れるが、筋線維や筋膜が断裂したときには陥凹を触れる。筋を収縮させると疼痛(とうつう)性の機能障害がみられ、皮下出血を認めることもある。寒い日、グラウンドが堅く、靴のスパイクが長すぎるときに多いとされており、気温の変化や急激な力強い筋収縮などが誘因となる。治療としては断裂部局所の安静が重要で、スポーツ選手の場合はテーピングや圧迫包帯が効果的である。2、3日の冷湿布ののち、温湿布にかえ、1週間後から温浴マッサージを始める。完全に筋肉が回復するには3週間から1か月くらいかかる。十分に準備体操を行うことが予防となる。

[荒木京二郎]

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百科事典マイペディア 「肉離れ」の意味・わかりやすい解説

肉離れ【にくばなれ】

筋肉(筋繊維)の断裂。筋肉の急激な伸展,協同作用の失調などが原因。急に激しい運動をするとき下肢に起こることが多い。筋力が落ち,激痛がある。習慣性になりやすいので,冷湿布をして早く医師の治療を受ける。

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