日本大百科全書(ニッポニカ)「肉離れ」の解説
肉離れ
にくばなれ
骨格筋の筋線維が局所的に断裂した状態をいい、スポーツ外傷の一つとして知られる。ランニング、ジャンプ、スタート時など急に筋肉を強く収縮したり伸展した場合に発生する。短距離、ハードル、サッカーなどの選手では半膜様筋や大腿(だいたい)四頭筋など大腿部の筋肉に多くみられ、中・長距離選手では下腿三頭筋におこりやすい。
筋腹の部分に突然電撃様の激痛がおこり、受傷部位に硬結を触れるが、筋線維や筋膜が断裂したときには陥凹を触れる。筋を収縮させると疼痛(とうつう)性の機能障害がみられ、皮下出血を認めることもある。寒い日、グラウンドが堅く、靴のスパイクが長すぎるときに多いとされており、気温の変化や急激な力強い筋収縮などが誘因となる。治療としては断裂部局所の安静が重要で、スポーツ選手の場合はテーピングや圧迫包帯が効果的である。2、3日の冷湿布ののち、温湿布にかえ、1週間後から温浴マッサージを始める。完全に筋肉が回復するには3週間から1か月くらいかかる。十分に準備体操を行うことが予防となる。
[荒木京二郎]