肺腫瘍(読み)はいしゅよう

日本大百科全書(ニッポニカ) 「肺腫瘍」の意味・わかりやすい解説

肺腫瘍
はいしゅよう

肺にみられる腫瘍で、良性腫瘍悪性腫瘍がある。良性腫瘍のなかには真の新生物のほかに、過誤腫(腫瘍状にみえる組織異常の一種)や腫瘍とも炎症とも決めがたいもの(肺偽腫瘍)も含まれている。また、気管支腺腫(せんしゅ)として気管支カルチノイド、腺様嚢胞癌(のうほうがん)、粘表皮癌も良性腫瘍に入れられていたが、これらの腫瘍は局所において浸潤性に発育し、遠隔転移を認めるものがあり、今日では悪性度の低い肺癌として取り扱われている。肺の良性腫瘍は比較的まれなもので、全肺腫瘍の5%とも9%ともいわれている。このうち、よくみられるものは過誤腫、硬化性血管腫、肺動静脈瘻(ろう)であるが、これらの腫瘍は前述のように真の新生物といってよいかどうか問題がある。

 肺の悪性腫瘍の代表的なものは、原発性肺癌である。広義の肺癌のなかには原発性肺肉腫も含まれるが、これはまれなものである。原発性肺悪性腫瘍のほかに、肺には転移性肺腫瘍がある。これは、肺以外の臓器に発生した悪性腫瘍の腫瘍細胞が原発局所から血中に入り、肺に運ばれてそこで増殖し、腫瘍を形成したものである。肺転移をきたしやすい悪性腫瘍は、骨肉腫、軟部組織の肉腫、絨毛(じゅうもう)癌、乳癌甲状腺癌、腎(じん)腺癌などである。転移性肺腫瘍は原発腫瘍の立場からみれば進行癌であるが、原発の悪性腫瘍の治療が十分に行われて局所再発がなく、肺以外の臓器に転移がないものに対しては外科的治療が行われる。このような適応に則して手術的に切除されたものでは、予想以上によい治療成績が得られている。

[石原恒夫]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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