骨肉腫(読み)コツニクシュ(英語表記)osteosarcoma

デジタル大辞泉 「骨肉腫」の意味・読み・例文・類語

こつ‐にくしゅ【骨肉腫】

骨にできる悪性腫瘍しゅよう大腿骨だいたいこつ下端、脛骨けいこつ上腕骨などの上端に発生することが多く、痛み、赤くはれる。肺などに転移することもある。青少年期の発病が多い。

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共同通信ニュース用語解説 「骨肉腫」の解説

骨肉腫

骨にできるがん。国立がん研究センターによると、発症者は日本で年間200~300人とまれ。骨が急速に成長する10代が中心で、膝や肩周辺に見つかることが多い。エックス線撮影や組織の顕微鏡観察などで診断し、抗がん剤や手術で治療する。恐竜化石の研究には古生物学、病理学、放射線医学、整形外科学などの専門家が参加し骨肉腫を特定した。

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精選版 日本国語大辞典 「骨肉腫」の意味・読み・例文・類語

こつ‐にくしゅ【骨肉腫】

  1. 〘 名詞 〙 悪性骨腫瘍の一つ。多く大腿骨の下端や脛骨上端におこる。疼痛、腫脹、運動障害を伴い、しばしば病的骨折を生ずる。一〇代の少年に多い。

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改訂新版 世界大百科事典 「骨肉腫」の意味・わかりやすい解説

骨肉腫 (こつにくしゅ)
osteosarcoma

腫瘍細胞が直接類骨もしくは骨を形成する悪性腫瘍。骨に発生する悪性腫瘍には骨肉腫をはじめ,軟骨肉腫,繊維肉腫,ユーイング肉腫など多種類の腫瘍が含まれる。そのなかでも最も発生数の多い代表的な骨の悪性腫瘍が骨肉腫である。発生原因についてはまだ明らかでない。日本における年間新患者の発生数は百数十例で,胃癌,肺癌,乳癌などの発生数に比較すると,その発生数は多くはない。好発年齢は10歳から20歳の最も発育の盛んな時期で,男女比は3対2でやや男性に多い。発生部位は,大腿骨下端,脛骨上端,上腕骨上端,腓骨上端など,主として長管骨の骨幹端であるが,そのほか脊椎や骨盤などにも発生する。最も発生数の多い部位は大腿骨で,とりわけ大腿骨下端に約50%の発生がみられ,次に脛骨上端に約20%,腓骨上端に5%の発生がみられる。これらを合計すると約75~80%は膝関節部に発生するといえる。

初めの症状は運動時痛で,走ったり,跳んだり,物を投げたりする際に膝関節や肩関節,股関節の疼痛を生じる。このような関節痛を生じる疾患は非常に多く,膝関節痛が生じたら直ちに骨肉腫と考えることはないが,疼痛が持続したり,腫張が生じた場合は専門医へ受診する必要がある。疼痛は最初は運動時の疼痛で間欠的であるが,やがて疼痛は持続的となり,病巣部に一致して腫張や関節の可動性制限を生じるようになり,大腿骨や脛骨発生例では疼痛のために跛行を生じ,上腕骨上端発生例では肩関節の運動制限を生じるようになる。病気の進行につれ,病巣部に一致して静脈怒張,局所熱感,圧痛などを生じる。この時期になって病院で受診する人が多いが,この時期にはかなり病気が進行している場合が多い。さらに病気が進行すると,皮膚に発赤を生じ,巨大な腫瘤を触知するようになる。

骨肉腫の診断は,多くの場合X線撮影で可能であるが,ほかに血管造影,骨シンチグラム,他の臨床検査結果,病理組織検査など総合的診断によりなされる。骨肉腫が示すX線像は,典型例では骨破壊像と骨形成像,スピクラspiculaやコードマン三角Codman triangleと呼ばれる骨膜性反応像であるが,腫瘍によっては骨形成,または骨破壊を主として示す場合もある。骨形成を主体とする骨肉腫はX線分類上造骨性と呼ばれ,骨破壊像を主体とする場合は溶骨性と呼ばれる。また造骨像と溶骨像が混在する場合は混合型と呼ばれる。血管造影像では豊富な新生血管網がみられるほか,チュモア・ステインtumor stainと呼ばれる腫瘍全体が造影剤により染め出される所見が認められる。テクネシウム99mリン酸化合物による骨シンチグラムでは腫瘍に一致して集積像が見いだされるが,ときには肺転移を示す肺内集積像,ほかの骨への転移を示す原発巣以外の骨の集積像を示すこともある。多くの場合,骨のX線像,血管造影像,骨シンチグラムなどにより診断がつけられるが,確実な診断のためには腫瘍組織の一部を手術的に採取して病理組織学的検査により診断を決定する必要がある。

 病理組織学的診断では,腫瘍細胞が直接類骨や骨組織を形成している所見が認められれば骨肉腫と診断される。組織学的には類骨,骨組織,軟骨組織,繊維組織などが認められ,主体を占める組織像によって骨形成型,軟骨形成型,繊維形成型と血管拡張型の4型に分類される。

 骨肉腫の治療は,手術的療法,化学療法放射線療法免疫療法などを含む集学的治療である。四肢の長管骨に発生した場合には四肢の切断術や関節離断術が行われる。大腿骨上端に生じると股関節離断術もしくは骨盤半截術が,大腿骨下端発生例では高位大腿切断術もしくは股関節離断術が適応となる。脛骨上端発生例では膝上部切断術が行われ,上腕骨上端発生例では肩関節離断術もしくは肩甲帯離断術が行われる。年齢が17~18歳で発育がほぼ停止した年齢層では,化学療法によく反応し,長期間の化学療法に耐えうると思われる場合には腫瘍を切除し,人工骨や人工関節により骨の欠損部の補塡(ほてん)を行うことがある。手術的に除去ができない部位に生じた場合には放射線療法,化学療法を行う。肺に転移巣を生じた場合は化学療法を行い,転移巣の数が増加することなく,また転移巣の縮小が認められれば積極的に開胸手術を行って病巣切除を行う。化学療法には種々の薬剤が用いられるが,化学療法中には吐き気,嘔吐,食欲不振,脱毛などのほかに白血球や血小板の減少を生じることがあり,専門病院での治療が必要である。化学療法は治療開始後1年半ないし2年間にわたり続ける。特殊な化学療法として,腫瘍の栄養血管内に抗癌剤を持続的に注入する持続動脈内注入療法,腫瘍へ行く動静脈内にチューブを入れ,これをポンプに接続し局所の循環をつくり,その中に薬剤を入れ,高濃度の薬剤を腫瘍に投与するとともに全身的副作用を軽減する局所灌流法,気管支動脈内へ抗癌剤を投与する気管支動脈内注入法などの方法がある。通常の化学療法は静脈内投与で行われるが,多剤併用療法が行われているのが現状である。放射線療法にはリニアック線形加速器),ベータトロンなどの装置や,高速中性子などが用いられる。今日行われている免疫療法は,腫瘍組織に直接効果を示す特異的免疫療法ではなく,身体の抵抗性を増す非特異的免疫療法が主である。これらの薬剤は注射や内服として用いられる。骨肉腫の予後は非常に不良であり,多くは肺の転移により呼吸不全で死亡することが多かった。1960年代では5年生存率は10~20%といわれていたが,70年代に入り有効な制癌剤の開発や投与方法が開発され,強力な化学療法を行うことによって著しい治療成績の向上がもたらされている。日本における1972-80年の骨肉腫780例の5年生存率は31.7%であるが,治療開始時に肺や他の骨への転移のない589例では40.4%である(90年代にはさらに70%台にまで上昇している)。

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家庭医学館 「骨肉腫」の解説

こつにくしゅ【骨肉腫 Osteosarcoma】

[どんな病気か]
 骨肉腫は、悪性骨腫瘍(あくせいこつしゅよう)(骨のがん)のなかでは、もっとも発生数の多い腫瘍です。
 少し専門的になりますが、この腫瘍の細胞は、幼弱な骨の組織をつくる能力をもっています。
●頻度
 日本整形外科学会では、全国の骨腫瘍の患者さんの登録を行なっていますが、毎年、百数十例の骨肉腫の患者さんが登録されています。
 この数が、すべてのがん発生数の何%にあたるのか明らかではありませんが、全悪性骨腫瘍の発生率は、10万人に対して0.8人といわれています。また、骨肉腫は、悪性骨腫瘍全体の40%ちかくを占めています。
 しかし、胃がんや肺がんに比べて、骨肉腫の発生数は、きわめて少ないといえます。
 小学生から大学生といった若い年齢層に多くみられ、治療成績が、いまだに満足できるようなものではないことが問題点となっています。
●年齢・性別
 もっともかかりやすいのは10歳代、以下20歳代、10歳未満の順になっています。年齢が高くなるにつれて発生は少なくなります。
 男女比は3対2で、男性にやや多く発生します。
●発生しやすい部位
 この腫瘍の半数ちかくは、大腿骨(だいたいこつ)の下端にできます。
 つぎに多くみられる部位は脛骨(けいこつ)(膝(ひざ)から下の太いほうの骨)の上端です。
 腓骨(ひこつ)(膝から下の細いほうの骨)の上端にも発生し、70~80%が、膝の周囲にできます。
 上腕骨(じょうわんこつ)の上端(肩の部分)にも比較的多くみられます。
 その他の骨にも発生しますが、その数はきわめて少数です(図「骨肉腫の発生しやすい部位」)。
[症状]
 はじめ、走ったり跳んだりした後に、膝の関節が痛んだり、ボールを投げたりした後に、肩の関節に痛みを感じたりします。
 痛みは、安静にしていると軽くなるので、多くの人は、スポーツによる痛みと考えます。事実、大部分の痛みはそうなのですが、骨肉腫の場合は痛みがだんだん強くなり、安静時でも痛むようになります。
 この時期になると、患部の腫(は)れ、発赤(ほっせき)(赤くなる)、熱感(さわると熱く感じる)、さらに関節の動きが悪くなり(可動性制限)、脚(あし)をひきずって歩いたりする(跛行(はこう))こともあります。
 たいていの人が、この時期に医師を受診しますが、最初の痛みがおこってから2~3か月たっています。
 したがって早期発見のためには、このような痛みが1か月以上も続く場合、整形外科を受診して、骨腫瘍であるかないかを確かめる必要があります。
[検査と診断]
 もっとも簡便な診断方法はX線検査です。X線像だけで診断ができることもあります。
 しかし、骨肉腫の疑いが強い場合には、X線像のほかに、CT(コンピュータ断層撮影)、MRI(磁気共鳴画像装置)、血管造影(造影剤を血管に注入して血管のX線写真を撮るもの)、骨シンチグラフィー(アイソトープによる画像で腫瘍を見つける検査)などの検査を行ないます。
 また、血液に含まれるアルカリホスファターゼ(とくに骨の腫瘍で血液中に増える物質)を検査したり、肺への転移を調べるために肺のX線検査やCT検査を行ないます。
 最終的な診断は、腫瘍の組織の一部をとって顕微鏡で調べる病理組織学的検査を行ない、その結果と、いろいろな検査の結果を総合して決定します。
[治療]
 骨肉腫の治療は、手術と抗がん剤などを使用する化学療法が中心ですが、ときに放射線療法が加わることもあります。
 手術が不可能な場合には、化学療法、放射線療法が行なわれます。
 手術療法 30年ぐらい前は、骨肉腫の発生した四肢(しし)(腕や脚(あし))を切断する切断術、関節から切り離す関節離断術が行なわれていました。しかし、化学療法の発達によって、腕や脚を切らないようにする手術が広く行なわれるようになりました(患肢温存手術(かんしおんぞんしゅじゅつ))。
 手術では、腫瘍を、骨を含めて切除し、骨の切除された部分は、人工関節、人工骨など、いろいろな材料を用いて再建します。
 こうした手術は、すべての人に行なうわけにはいきません。腫瘍がさほど大きくない、化学療法がよく効く、主要な血管や神経を切らずにすむ、といったときに、患肢温存手術の対象となります。
 化学療法 骨肉腫は、血管に悪性の細胞が流れ込んで、しばしば肺に転移します。
 この肺への転移を防ぐことが、生命を救うたいせつな治療の1つです。
 そのため、骨肉腫の診断が確定すると、抗がん剤などを使った化学療法が行なわれます。
 化学療法は吐(は)き気(け)、嘔吐(おうと)、脱毛(だつもう)、白血球減少(はっけっきゅうげんしょう)などの副作用をともないますが、治療が終われば回復するものです。化学療法は、治療を始めてから約1年で終了します。
 放射線療法 腕や脚を温存する1つの方法として、手術で腫瘍の部分を健康な部分から分けて、腫瘍の部分にだけ放射線の照射を行なう方法(術中放射線療法)を行なっている医療施設もあります。
 また、手術が不可能なところに腫瘍ができた場合は、放射線療法が行なわれます。
●治療成績
 治療を開始したときに肺や他の骨に転移していない人では、5年生存率(5年たった時点での生存率)は約50%となっています。このうち腕や脚を切らずにすんだ人では、5年生存率は約70%以上となっています。
 つまり、腕や脚を切らずにすんだ人は、それだけ条件がよいといえます。
 この点からも、早期発見・早期治療がたいせつであることがわかります。
 切断や関節離断を行なった人には、義足(ぎそく)などが必要になります。
 最近は、すぐれた義足をつくることができますので、歩行はつえなしで十分可能となります。
 治療の費用については、子どもの場合、厚労省が定めた「小児慢性特定疾患」に含まれる病気なので、手続きをすれば、公費によって治療費の給付が受けられます。18歳未満でこの病気になった場合には、20歳まで延長して治療費の給付が受けられます。
 また、大腿で切断された場合は、身体障害者手帳にある、3級の障害に相当します。
 都道府県の指定医の診断書(身体障害者用診断書)を添えて、手続きをすれば、身体障害者手帳が交付され、いろいろなサポートが受けられます。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「骨肉腫」の意味・わかりやすい解説

骨肉腫
こつにくしゅ
osteosarcoma

原発性の悪性骨腫瘍(しゅよう)で、一般には骨原性肉腫をさす。この腫瘍は骨様組織を形成する腫瘍で、10歳代の男子に多い。部位では長管状骨の骨幹端部に発生し、とくに大腿骨(だいたいこつ)下端、脛骨(けいこつ)上端、上腕骨上端などに多い。症状は局所の疼痛(とうつう)をもって始まり、腫瘍が発育して骨皮質まで侵されたりすると、局所の腫脹(しゅちょう)、発赤、熱感などが現れ、拍動が触れられたりする。X線写真では骨吸収、骨破壊、骨形成などの像がみられる。治療は、診断が確定したら、できるだけ早く腫瘍より中枢部で患肢を切断する。肺転移をおこしやすく、切断しても2、3年以内に死亡するものが多く、5年以上の生存率は10%前後とされている。なお、原発性の悪性骨腫瘍にはこのほか、軟骨肉腫やユーイング肉腫などがある。

[永井 隆]

軟骨肉腫

一次性の軟骨肉腫と、軟骨性外骨腫や内軟骨腫などから発生した二次性のものとがある。長管状骨に多いが、骨盤骨などにも発生する。この腫瘍の予後は骨肉腫よりもよいとされている。

[永井 隆]

ユーイング肉腫

アメリカの病理学者ユーイングJames Ewing(1866―1943)が1921年に初めて記載した疾患である。細網肉腫で、若年者の長管状骨、とくに大腿骨の骨幹端部や骨幹部に発生する。局所の疼痛、腫脹、発赤、熱感などの炎症症状が強く、また発熱、白血球増加などがみられ、急性化膿(かのう)性骨髄炎と誤られやすい特異な悪性骨腫瘍である。X線像で針状体、タマネギ状骨膜肥厚の所見が認められる。治療は骨肉腫と同じで、予後も骨肉腫と同様に悪い。

[永井 隆]

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百科事典マイペディア 「骨肉腫」の意味・わかりやすい解説

骨肉腫【こつにくしゅ】

骨の悪性腫瘍(しゅよう)の一種。骨質の形成を伴う肉腫で,他に軟骨肉腫,繊維肉腫,血管肉腫などがある。いずれも悪性で,放射線治療も有効でなく,切断を必要とすることが多い。化学療法の併用によって,予後良好の例が増えつつある。若年者に好発し,肺に血行的に転移することがある。
→関連項目骨腫瘍ボーンバンク

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「骨肉腫」の意味・わかりやすい解説

骨肉腫
こつにくしゅ
osteosarcoma; OS

10歳代の男子に好発する悪性腫瘍。腫瘍細胞がみずから類骨や幼若な骨をつくる能力をもっており,原発性の骨悪性腫瘍中では最も頻繁に発生する腫瘍である。大腿骨下端,脛骨上端に発生することが多いが,血流によってしばしば肺にも転移する。 70~80%まで痛みがあり,激しい痛みが突然起る。約半数には腫脹を認める。進行すると,歩行障害,全身障害,全身倦怠感,脱力感,発熱が現れる。予後は不良で,経過は1年半ぐらい。治療としては,手術による摘出,制癌剤使用,放射線治療が行われる。子供の手足の骨,特に膝関節付近の骨に痛みが起った場合は,放置せず,すぐに専門医の診察を受けることが望ましい。

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