脳振盪(読み)のうしんとう(その他表記)Cerebral concussion

六訂版 家庭医学大全科 「脳振盪」の解説

脳振盪
のうしんとう
Cerebral concussion
(外傷)

どんな外傷か

 頭部外傷のうち、受傷時の記憶喪失(きおくそうしつ)、あるいは受傷後6時間以内に回復した意識消失がある場合を、臨床的に脳振盪と定義しています。

原因は何か

 頭部打撲(だぼく)の衝撃により脳細胞が一時的に機能を停止、あるいはその一部損傷を受けて一過性意識障害が起こります。

症状の現れ方

 健忘(けんぼう)記憶が失われること)が起こるため、受傷時のことを思い出せません。

 見当識(けんとうしき)の障害(日付や場所、周囲の人のことがわからない)や意識消失が一過性にみられることもありますが、ほとんどの場合は受傷直後に改善するため健忘けが残り、その他の脳の機能異常は認められません。

 頭痛嘔吐などを伴うこともあります。

検査と診断

 通常、頭部CTでは異常が認められませんが、CTよりも精度の高い頭部MRIでは小さな出血やむくみ(浮腫)が映し出されることがあります。

治療の方法

 経過観察だけで正常に回復します。頭部CTで脳挫傷(のうざしょう)血腫などの異常があれば、それに対する治療が行われます。頭痛や嘔吐があれば、症状に応じて安静、点滴あるいは薬物療法対症療法として鎮痛薬制吐薬など)が行われます。

 失われていた記憶の一部はもどりますが、けがをした時のことは思い出せないのが普通です。ただし一般的には、その後に記憶障害後遺症として残ることはありません。

並木 淳

出典 法研「六訂版 家庭医学大全科」六訂版 家庭医学大全科について 情報

改訂新版 世界大百科事典 「脳振盪」の意味・わかりやすい解説

脳振盪 (のうしんとう)
cerebral concussion

頭部に外傷を受けた際に短時間,意識がなくなる状態をいう。脳挫傷とは異なり,脳そのものの形態的な変化,たとえば脳出血や脳浮腫を伴わず,脳の単なる機能的障害である。脳振盪は多くの場合,一時的な意識障害以外に逆行性健忘,錯乱,傾眠などを伴うことが多い。またとくに小児では嘔吐を伴うことがあるが,これは外傷後の平衡機能障害によるものと考えられる。脳振盪後にあらわれる症状としては,疲労感,脱力感,悪心,めまい,頭痛,視力障害,言語障害,集中力の低下などがあり,これらの症状は外傷後かなり長期間にわたって存在することがある。小児では,夜尿症,悪夢体験,夜泣き,病的恐怖,易興奮性などが脳振盪のあとに出現することがある。脳振盪は最も軽症の閉鎖性頭部外傷であるが,コンピューター断層撮影(CT検査)などの検査を行い,脳内出血や脳挫傷がないことを確かめる必要がある。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「脳振盪」の意味・わかりやすい解説

脳振盪
のうしんとう
cerebral concussion

頭部に激しい外力が作用した直後に起る一過性の意識障害で,脳に著明な器質的変化のないものをいう。視力障害,平衡障害,ときには運動麻痺を伴うことがある。

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