改訂新版 世界大百科事典 「脳振盪」の意味・わかりやすい解説
脳振盪 (のうしんとう)
cerebral concussion
頭部に外傷を受けた際に短時間,意識がなくなる状態をいう。脳挫傷とは異なり,脳そのものの形態的な変化,たとえば脳出血や脳浮腫を伴わず,脳の単なる機能的障害である。脳振盪は多くの場合,一時的な意識障害以外に逆行性健忘,錯乱,傾眠などを伴うことが多い。またとくに小児では嘔吐を伴うことがあるが,これは外傷後の平衡機能障害によるものと考えられる。脳振盪後にあらわれる症状としては,疲労感,脱力感,悪心,めまい,頭痛,視力障害,言語障害,集中力の低下などがあり,これらの症状は外傷後かなり長期間にわたって存在することがある。小児では,夜尿症,悪夢体験,夜泣き,病的恐怖,易興奮性などが脳振盪のあとに出現することがある。脳振盪は最も軽症の閉鎖性頭部外傷であるが,コンピューター断層撮影(CT検査)などの検査を行い,脳内出血や脳挫傷がないことを確かめる必要がある。
執筆者:天野 恵市
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報