外傷による局所の脳組織の
頭部を
脳挫傷からの出血と、挫傷部とその周囲の脳がむくんでくる(
脳挫傷の局所の症状として、半身の麻痺(
多量の血腫ができた場合や、脳浮腫による圧迫で脳ヘルニアの状態にまで進行すると、深部にある生命維持中枢(
脳挫傷からの出血によって脳内血腫をつくる場合は、受傷直後に症状が現れることがほとんどですが、高齢者では遅れて血腫が増大することがあるので注意が必要です。
最近の統計では、重症の脳挫傷(脳内血腫の合併を含む)の14%(50歳以上では22%)で意識障害が遅れて現れています。意識障害出現までの時間は急性硬膜外血腫や急性硬膜下血腫よりやや長く、その74%が6時間以内でした。
頭部CTで、脳挫傷からの出血と脳浮腫の混じりあった像を示します。CTで出血は白く(高吸収域)、脳浮腫はやや黒く(低吸収域)映るので、典型的には高吸収域と低吸収域が混在した塩コショウ様あるいは霜降り様と呼ばれる所見を示します。
出血の少ない小さな脳挫傷は、CTの精度では映し出されないことがあり、この場合には頭部MRIが診断に有用です。
血腫を伴わなければ、頭蓋内圧亢進に対する脳圧降下薬(グリセオールやマンニトール)の点滴注射が行われます。頭蓋内圧亢進に対する特殊な治療法としてバルビツレート療法や低体温療法がありますが、副作用も大きいため、適応は慎重に判断されます。頭蓋骨を外す
予後は一般的に入院時の意識障害の程度に比例し、
並木 淳
出典 法研「六訂版 家庭医学大全科」六訂版 家庭医学大全科について 情報
脳の表面か深部かを問わず、脳組織の挫滅により出血と壊死(えし)がみられる構造破壊の形態を示すことば。転落、暴力、交通事故などによる頭部の打撲が原因で、脳に肉眼的に識別できるような裂けを伴う創傷が生じていると診断される状態は脳裂傷という。頭部外傷による閉鎖性脳損傷のうち脳しんとうよりも重篤なもので、数時間以上に及ぶ意識障害、運動麻痺(まひ)などの錐体路(すいたいろ)症候、瞳孔(どうこう)不同症、けいれん発作などがみられ、しばしば硬膜下血腫(けっしゅ)や脳内血腫、頭蓋(とうがい)骨骨折などを伴う。脳実質損傷は、受傷時の力学過程を反映して、局所性損傷とびまん性の損傷に分けられる。通常、脳挫傷は脳の特定部位に限局してみられる。打撲部位の直撃損傷、反対側の反衝損傷、脳の回転運動などによって脳組織が挫滅する滑り損傷などである。それに対して脳幹を含めて脳全体に損傷がみられる場合がある。このうちびまん性軸索(じくさく)損傷は脳実質損傷の特殊型として取り扱われる。脳挫傷は、病理形態学的なことばであるが、しばしば臨床的な重症度を示すことばとして用いられる。脳実質損傷は、臨床的には大きく3型に分けて考えるのが便利である。(1)頭蓋骨骨折に伴うもの、(2)直撃一対側損傷に基づずくもの、(3)びまん性損傷の部分現象として現れるもの、である。症状として脳髄各所の出血や挫滅巣に伴う限局性・びまん性の脳浮腫(ふしゅ)が必発するとともに脳循環が妨げられ、ますます浮腫が増強される。これを未然に防ぐことが重要である。
重症の場合は広範囲頭蓋減圧開頭術が行われるが、一般には脳浮腫や脳腫脹(しゅちょう)、すなわち頭蓋内圧の亢進(こうしん)状態を防止あるいは改善するための保存療法が行われる。脳循環を確保して十分な酸素量を脳に供給し、高張液の点滴静注または経口投与によって脳浮腫の脱水を図るほか、頭蓋内圧下降を目的としてバルビツール剤の点滴静注を行ったり、副腎(ふくじん)皮質ホルモンや中間代謝促進剤、鎮けい剤や鎮静剤、さらに局所感染や肺感染症などの合併症防止のために抗生物質も投与される。最近、低体温療法が見直されてきている。
[加川瑞夫]
頭部外傷によって脳,とくに脳の表面に起こる損傷で,局所の脳浮腫と組織内の小さな点状出血との集合体をいう。脳振盪(のうしんとう)が脳組織の形態的変化を伴わないのに対して,脳挫傷は脳振盪よりも一段と強い障害であり,脳組織の形態的損傷を伴うので,より強い意識障害,運動片麻痺などを生ずる。頭部外傷後,時間経過とともに状態が悪化し,脳挫傷が脳内血腫になることもある。脳挫傷の起こりやすい部位は,大脳の前頭葉の下面あるいは前方極部,および側頭葉の前方極部である。その理由は,これらの脳の部分が頭蓋骨内面の凹凸に富んだ部分に接しているためで,頭部に外力が加わった場合に,脳そのものが移動して頭蓋骨内面に打ちつけられ,脳挫傷を生じやすい。したがって頭部に外力が加わった場合に,外力が加わった直下ばかりでなく,その反対側にも脳挫傷を生ずることが多い。
執筆者:天野 恵市
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
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