脳血管障害の分類

内科学 第10版 「脳血管障害の分類」の解説

脳血管障害の分類(血管障害)

 脳血管障害(cerebrovascular disease)とは,「脳の一部が虚血あるいは出血により一過性または持続性に障害を受けるか,脳の血管が病理的変化により一次的に侵される場合,またはこの両者が混在するすべての疾患」と定義される.脳血管障害は,脳卒中stroke)と同義語であり,脳梗塞脳出血くも膜下出血をおもに意味し,これらの総称である.この脳血管障害の分類は過去にいくつかのものが提唱されてきたが,現在では1990年,米国NIHのNINDS(The National Institute of Neurological Disorders and Stroke)による脳血管障害分類(NINDS-Ⅲ,表15-5-1)(NINDS, 1990)に沿って分類されることが多い.臨床病型は経過,機序,部位診断を含み,脳卒中の臨床診断に重要な位置を占めている.脳卒中は脳出血,くも膜下出血,動静脈奇形よりの出血,脳梗塞に病型分類される.さらに脳梗塞はアテローム血栓性脳梗塞,心原性脳塞栓症,ラクナ梗塞,その他に分類される.表に脳梗塞の各病型について明確な診断基準を示したTOAST分類(表15-5-2)を示す(Adamsら,1993).大血管アテローム硬化はNINDS-Ⅲのアテローム血栓性脳梗塞,心塞栓症は心原性脳塞栓症,小血管病はラクナ梗塞に該当する.大血管アテローム硬化は主幹動脈の50%以上の狭窄があること,心塞栓症は塞栓源となる心疾患があることを必須としている.小血管閉塞は原因となる穿通枝の閉塞を証明することが困難であるため,ラクナ症候群と画像上の穿通枝領域の小梗塞(長径1.5 cm以下)の存在を診断基準としている.脳梗塞におけるNINDS-Ⅲ分類と従来の病型分類との関係を表15-5-3に示す(藤島,1997).
脳卒中の臨床分類(NINDS-Ⅲ)
 臨床病型(clinical disorder)は無症候性(asymptomatic),局所性脳機能障害(focal brain dysfunction),血管性認知症(vascular dementia),高血圧性脳症(hypertensive encephalopathy)に分けられる.
a.無症候性脳血管障害
 神経症状あるいは網膜病変を呈さない脳血管障害で偶然にCT,MRIまたは剖検で発見されるものをいう.MRI T2強調画像において辺縁が円滑な高信号病変は,病理所見上,血管周囲腔の拡大を示し,辺縁が不正な高信号病変はラクナ梗塞を示すことが多い.
b.局所性脳機能障害
 1つの血管系の灌流領域に虚血が生じることによる神経症状を示す.症状が24時間以内で改善すれば,一過性脳虚血発作とし,症状が持続した場合には脳梗塞という.閉塞血管による症状は表15-5-4に示す.
c.血管性認知症
 広範囲の脳梗塞や多発性脳梗塞などにより認知機能が障害され,認知症を呈すると考えられている.
d.高血圧性脳症
 現在では比較的稀有な疾患である.急速な血圧上昇により意識混濁や痙攣,一過性の神経学的所見の異常を呈する.拡張期血圧は130 mmHg以上のことが多い.髄液圧上昇,乳頭浮腫などの頭蓋内圧上昇の所見,画像上明らかな出血を認めないことなどが診断に有用である.降圧により症状は改善する.[棚橋紀夫]
■文献
Adams HP Jr, Bendixen BH, et al: Classification of subtype of acute ischemic stroke. Definition for use in a multicenter clinical trial. Stroke, 24: 35-41, 1993.
Committee established by the director of the NINDS: Classification of cerebrovascular diseaseⅢ.Stroke, 21: 637-676, 1990.
藤島正敏:わが国における脳卒中の変遷と新しい分類.内科,79:
637-640, 1997.

出典 内科学 第10版内科学 第10版について 情報

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