出典 内科学 第10版内科学 第10版について 情報
一過性脳虚血発作(TIA)とは、脳に行く血液の流れが一過性に悪くなり、運動麻痺、感覚障害などの症状が現れ、24時間以内、多くは数分以内にその症状が完全に消失するものをいいます。
大きく分けて2つあります。ひとつは血管の壁にできた小さな
しかし血栓が小さかったり血栓の詰まり方が弱いと、いったん詰まった血栓は自然に溶けて再び血液が流れるようになり、症状は消失します。この状態がTIAです。
もうひとつは、血圧が急激に低下する場合です。もともと動脈硬化があることから太い動脈の
TIAが臨床的に重要なのは、脳梗塞の前触れになるからです。TIAがあった場合、約10%が1年以内に、約30%が5年以内に脳梗塞を発症するとされています。
TIAの発症は急激で5分以内に症状が完成し、2~30分(多くは数分)続きます。大脳へ行く血管系には
診断には頸動脈の超音波ドプラー検査が有用で、血管の内中膜の厚さや、動脈硬化の指標になるプラークの状態を調べます。血管の病変が原因のTIAでは、詰まりの源になる脳血管の病変を調べることが重要で、脳血管撮影を行い、その狭窄部位と狭窄の程度をみます。
拡散強調画像MRIは急性期の脳梗塞の有無をみるのに有用です。頸部から血管の雑音を聴き取ることもあります。心疾患が疑われる場合には心エコー検査を行います。
TIAは多くの場合、診察時には症状がおさまっているので、再発予防が重要です。そのためには脳梗塞の危険因子となる高血圧、糖尿病、脂質異常症の管理、禁煙指導、心疾患の治療、経口避妊薬の中止、運動指導などを行います。
再発予防のための薬物治療としては、抗血小板薬であるアスピリンまたはクロピドグレルまたはシロスタゾールを用います。TIAの最後の発作から少なくとも1年以上は投与し、基礎疾患のある場合にはさらに長期にわたり投与します。心臓からの血栓が
頸動脈の血管病変がひどく70%以上の狭窄がある場合は、
一過性の脳の循環障害の症状は、脳梗塞の前触れとして重要です。一過性の脱力、しびれなどの症状が現れ、TIAが疑われる場合は必ず受診して検査を受ける必要があります。
一度TIAを起こした患者さんで、数日以内に脳梗塞を起こすリスクが高いのはどのような人かを予測する方法が提唱されています。スコア(得点)方式で、①年齢が60歳以上はスコア1、②血圧が140/90㎜Hg以上はスコア1、③臨床症状で片側性脱力はスコア2、構音障害(脱力なし)はスコア1、④発作の持続時間が60分以上はスコア2、10~59分はスコア1とします。TIA発症7日以内に脳卒中を発症するリスクは、スコアの合計が4、5、6の時にそれぞれ、2.2%、16.3%、35.5%とされています。スコアの合計が増すほどリスクは大きいので、脳卒中に至る可能性のある人はできるだけ早く治療を開始することが大切です。
2週間以内に4回以上の発作がある場合、2週間以内に頻度、持続時間、重症度が急速に増している場合、心臓の異常が塞栓の原因と考えられる場合は、早期入院が必要です。
北川 泰久
出典 法研「六訂版 家庭医学大全科」六訂版 家庭医学大全科について 情報
出典 株式会社平凡社世界大百科事典 第2版について 情報
(2013-6-14)
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
…高齢者に多く,症状は徐々に発現し,段階的に進んでいくことが多い。また前駆症状として一過性脳虚血発作を伴うことも多い。発作は睡眠中あるいは起床時におこりやすく,半身麻痺,失語症などの巣症状に比べて意識障害は比較的軽い。…
※「一過性脳虚血発作」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社世界大百科事典 第2版について | 情報
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