腎・尿路疾患の症候

内科学 第10版 「腎・尿路疾患の症候」の解説

腎・尿路疾患の症候(腎疾患患者のみかた)

(2)腎・尿路疾患の症候
 腎・尿路疾患患者は,何らかの自覚症状を訴えて来院する場合と,無症状であるが検尿異常(尿蛋白や顕微鏡的血尿)や血液生化学検査の異常(血清尿素窒素やクレアチニン値の上昇)の精査を求めて来院する場合がある.実際の臨床の場では後者が多く,これが通常の健康診断で尿検査や血清尿素窒素,クレアチニン値の測定が行われている根拠である.
 腎・尿路疾患患者の診断はほかの内科的疾患と同様に,問診,身体診察,検査の順に行われる.診察にあたって大切なことは①一次性腎疾患(腎の限局した疾患)か,②内科的疾患か泌尿器科的疾患か,③内科的疾患ならおもに侵されている部位はどこかなどを考えながら診断を進めていくことである. 腎・尿路疾患に由来する症候や検査成績の異常は多様であるが,それらは特定の組み合わせに起こり,症候群を形成する(表11-1-1).一つ一つの異常は各症候群の大切な要素であるが,単一の異常で各症候群や疾患に特異的なものはない.排尿異常や尿の量・性状に関する異常(乏尿,無尿,多尿,肉眼的血尿)を呈する場合には直ちに腎・尿路疾患が疑われる.しかし,血管炎などでは,発熱,全身倦怠感,腹痛などが初発症状となることがあり,かつ,その時期にはまだ血清クレアチニン値の上昇がないか,またはごく軽度であることがしばしばある.また,慢性の腎疾患では症状に乏しく,自覚症状が出現したときにはときすでに遅く透析をまぬがれないケースもしばしば認められる.慢性透析患者が増加している現状を考えると早期発見し,早期に適切な対策を施すことが肝要といえる.[伊藤貞嘉]

出典 内科学 第10版内科学 第10版について 情報

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